俺の友達から聞いた話です。そいつの弟が体験したらしいんですが。その弟(Fとします)は、ウソをつくようなタイプではなく、どちらかというと寡黙で硬派な人物です。俺も会った時とっつきづらかったのを覚えています。そのFが真面目な顔をして訴えた話なんだそうです。
その日は日曜日でしたが、体育祭が近かったので、クラスのみんなで学校に集まって練習する予定だったそうです。午後1時半に集合予定でしたが、Fが起きたのはまさにその集合時間でした。慌てたFは、急いで着替えると家を飛び出し、普段は使わない近道を使うことにしました。そこは地元では『誘拐森』と呼ばれる、神隠しの起こると噂される昼でも暗い森でした。
Fは森を抜け、学校に着いたけど誰も居ません。「体育館かな?」と思ったFは体育館に向かいましたが誰も居ません。「教室…?」「職員室なら…」考えられるすべてを見て回りましたが、やっぱり誰もいません。そこでFは日にちか時間を間違えたのだろうと自分を納得させ、帰ることにしました。
帰り道、普段は人通りの多く、車も多い国道沿いを帰りましたが、そこでも誰もおらず車も無く、まるで世界に自分独りだけのような雰囲気でした。Fはいよいよおかしいと思い、近くの民家片っ端からドアを叩きましたが誰も出てきません。コンビニにも店員すら居ません。Fは半狂乱になって家に帰り、時計を見ました。時間は1時半のまま。Fはただただ時計を眺めることしかできませんでした。
そこへ俺の友達が帰宅し、Fが泣きながらすべてを話し終え、時計を見ると普通に進んでいたそうです。どこで行ったのかはわかりませんが、Fは少しの間、異次元を彷徨っていたようです。もし帰ってこれなかったら…
みなさんも、お気を付けください。異次元の扉はいつ、どこで開かれるかわかりません。