沖合に立つ人影の正体

私が幼少期に体験した、あまり怖くは無いですが不思議な出来事です。
その日、私はその頃一緒に住んでいた叔母さんの誕生日を祝う為、母や従姉妹と一緒に叔母さんの働く店へ行きました。叔母さんの店はスナックで、閉店後に御祝いをした為随分夜も遅かったと思います。そのせいかあまり派手な事は出来なかったのですが、それでは寂しいという事になり急遽近くの海辺の公園で花火をする事になったのです。

早速私達は近所のコンビニへ買い出しに行きそのまま公園へ。その公園はそれなりに整備こそされているものの深夜という事もあり、オレンジの街頭が僅かに輝く以外辺りは真っ暗でした。当然海なんて先は全く見えません。私達は、水を準備してくるのを忘れた為、海辺で花火をしようと其所に続く階段を降りていました。

その時、まだ幼かった私を脅かす為だったのでしょう。従姉妹が海を指さし…
「あっ、ほら!彼処に人が立ってる!」
驚き振り向いた先には、まぁ、当然ですが何もありません。というか、街頭の灯りは全く届いてないんです。自分から発光でもしないかぎり何かあったって見えない。その時は何も考えず、直ぐに幼い私の思考は花火へと奪われてしまいました。

まもなくして始まる花火大会。各々手持ち花火を楽しんでいます。そんな中、ふと私は何かを感じたわけでもなく海上に視線を向けました。すると…少なくとも悠に50mは離れているでしょう沖合に、一人佇む人の姿が見えるのです。輪郭はハッキリしていないのですが、上着は黄色のトレーナー、下はブルーのジーパンを穿いている様に見えました。輪郭はぼやけているのに、色彩はやけにハッキリと見える。その時の私は何故か不思議に思うばかりで恐怖を感じず、その方向へと手にしていた花火を向けました。その瞬間、その人影は消えたのです。もうなにがなんだか解らない。

そうして暫くまた花火を楽しんでいると、今度はさっき立たずんていた場所から数m横へ移動した場所に同じ人影が。私は従姉妹に「本当に人がいる」と訴えそちらを指さしました。火がついた花火を持った手で。案の定、またその人影は従姉妹が振り向く前に消えてしまいました。

それ以降は、どこにも現れなかったんです。いったいアレはなんだったんでしょう…?

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