行っていない所に私物が落ちていた話

今でも不思議だと思う話で、これは私が体験した話です。どうか聞いてください。
私の住む伊豆には周りにホテルや旅館が多いので、管理している寮も多いんですが、海添いにある伊豆のちょっとした高級ホテルに寮が二つあります。一つはとても綺麗な寮。もう一つは不気味に傷んでる廃墟寮…。

あれは3年くらい前…私は16の夏休みに家出をしました。原因は携帯の使いすぎでした。激怒した親が勝手に携帯を一時的に止めたので、逆切れして私は、何ももたずに家出をしたのでした。お金もなかったので友達の家で一日泊まらせてもったのですが、このまま友達の家だとすぐ見つかってしまうという話になり 『せめて今日の夜までは親を心配させたい…』と言う意志もあったので、友達が翌日、いいとこがあると言って、その廃墟寮に連れてこられました。

時間はまだ昼ぐらいだったか、外が明るくて今の内にと、その廃墟寮で身を隠す事にしました。入り口は固く閉ざされているので、入るには、非常口階段につづく岩と壁をとにかく登って行くのですが、慣れた感じの友達の後に続いてやっと入れた感じでした…。

中は薄暗く 部屋と言う部屋はドアも破壊されて荒らされていて、他の人達がふざけて入ったような形跡の物が転がっていました。とても湿っぽくてカビ臭く、ねずみの死骸がその辺に転がっていました。一階はもうダメですごく気持ちわるかったので、まっすぐ中央階段にいき、平気そうな部屋を探しました。すると、最上階の3階に、いくつか荒らされていない部屋があるのを見つけました。陽も差していて明るかったので、隅の部屋に決める事にしました。

一人じゃ心細いので暗くなるまで友達についててもらう事にしました。その間にこの廃墟の話を友達が話してくれました。…ここは寮として使われていた当時住んでいた外国人の中に何人か不法侵入者がいたらしく、警察に捕まってしまった事件があったそうです。ホテルの経営者がすべての外国人を次々に辞めさせたそうで、警察の家宅捜査が何度もあったためにすべての住人を移動させて誰もいなくなったという話。

『取り壊すにはお金がすごくかかるから』という理由で、現在のように廃墟と化してしまったのだそうです。友達の話は嘘か本当かわかりませんが、たしかに英語で書かれている古い新聞や雑誌が、散らばっていたので本当だったと思います。いつのまにか、そんな話や普段の話を山ほどしている間に外が暗くなってきました。『もう心配してると思うから素直に帰らない?』そう友達に言われました。

私も時間が断つごとにお腹も空いてきていたために友達のその言葉を本当は待っていたような感じでした。もう外が暗くなったせいで、部屋をでると廊下は真っ暗で何も見えません…。友達の携帯で照らしてながら手探りで歩いて、やっと外にでることができました。友達に別れを告げ家に帰ると、家族は本当に心配してくれていました。ご飯を食べて少し落ち着いた後、親に
『心配だから電話くらいでなさい。』といわれました。どうやら、心配で連絡を取るために携帯をつなげ直してくれていたみたいでした。

私は『使えなくなった携帯なんかいらないから置いてったよ』と言いました。しかし、自分の部屋にもどると携帯がありません。家族に聞いても見てないと言われるだけでした…。勝手になくなるはずがないので、もしかしたら持っていったのかと記憶が、次第にあいまいになり一緒にいてくれた友達にも聞いたのですがないと言うので、じゃあ廃墟に持って行って置いて来たのかもしれないと思い、翌日の昼にまた友達と廃墟に向かいました…。

中は相変わらずで、例の3階の端の部屋をまっすぐ見にいきました。でも見当たらないので友達に私の携帯を鳴らしてもらいながら探す事にしました。しかし、鳴らしても音がきこえません。私はどこか別の所で無くしたんだと思い、諦めて廊下に出ました。……すると、かすかに電話の着信音が聞こえてきたんです…。

やっぱりここで落として行ったんだと言いながら、音のなる方をしばらく探したのですが、なかなか見つかりません。2階に降り、…そして1階にきてみると、だんだん音が近くなってきたのがわかりました。音の鳴る方へとにかく向かいました…が、この辺は来たことがありません。…階段を挟んだ向かいがわ側の方…。なんでこっちから聞こえるのか不安でしたが、聞こえる先へ向かいました。なんども往復して……そしてやっと、音がすごく近いと思った場所……それは、ドアのしまった部屋の前でした。

恐る恐る友達が部屋のドアを開けようとしました。が、ドアノブは完全に湿気のせいで錆ついていてなかなか開きません。私も何度も強く回したんですが開きません。そもそもこの部屋にあるはずがない!と思ったのですが、いちおう開けようって事になり、友達と協力してドアノブを壊すことにしました。近くにあったテレビを何度もノブにぶつけて、やっと中に入る事に成功しました。

そしてまた携帯を鳴らしてもらうと、もう完璧にこの部屋の中からでした。何も置かれていない部屋の中…、恐々音の鳴る方へ近づくと、部屋の角隅に…私の携帯がありました。その瞬間は友達と無表情で顔を見合わせました。そして、黙って携帯を取り…黙って部屋を出て足早にその寮をでました。しばらく歩いた後友達が、悲鳴をあげて走っていってしまいました。そして私も同じように走って逃げました。

お互い家に帰って落ち着いた後、友達から電話があり、一人じゃ寝れないからと泊りにきて、何であの部屋に携帯があったのかをずっと話していました。その日は寝るときも電気を付けっ放しで。あれから3年、今だに理由がわかりません。あれは一体なんだったんでしょうか。本当に恐かった。

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