母にだけ聞こえない声

小学2年生の頃の話。当時二階建ての町営団地に住んでいました。まだ小さかったので夜の九時から十時の間に寝ていました。(といっても寝つくのはいつも十一時くらい)ある日いつものとおり二階の部屋で寝て、五分ほど経ってから壁の方から何やら聞こえてくるのに気づきました。最初は隣の家の話し声かなくらいに思っていました。

次の日は十時にふとんに入りました。するとまた五分ほど経ってから壁から聞こえてきます。あ…ね…あ…ねと聞こえます。なんだこれ??とか思っているといつの間にか寝ていました。ちなみに両親は深夜十二時か一時に同じ部屋で寝るがそういう声は全然聞こえないらしい。そして次の日もまたいつものとおり聞こえてきます。しかもまた五分ほど経ってから。それはよく聞いていると、あ…ね…あ…ね…あのね…あのね…あのねと聞き取れました。

あのね?なんだそれ??なんかおかしいぞ。よくよく考えると隣人にはこういう声の人はいないはず。それにただでさえ子供の声でもあのねと延々連呼し続けるのはおかしいのに聞こえてくるのは大人の女の人がささやくような声。じゃあ誰なんだこの声は…。

ふいに怖くなり母親を呼びましたが、間もなく声がやみました。母親が来てそのことを話しても信じてもらえませんでした。そして母親が一階にもどって俺がふとんに入って三十秒後、また声が聞こえてきました!ふとんをかぶって聞こえないようにしても、ささやくような声はなおも続きます。しかも寝るまでその声は止まりません。そんな日が毎日同じパターンで半年の間続いたある日俺はついに泣いてしまいました。

両親が二階に上がってきて、また同じように事情を話すが母親にはやはり信じてもらえません。父親は何も言いません。そして二ヶ月後、親の事情で引っ越すことになりました。それを聞いて俺が喜んだのはいうまでもありません。

ここから先は後日談です。引っ越して二年後父親が突然ぽつりとつぶやきました。あの時父親が何もいわなかったのは、前に1人で階段を上っているとき、耳元でお経が聞こえてきたことがあったからだそうです。父親は俺の聞いた声とお経が何か繋がりがあると思ったらしいのです。そして俺と母親が怖がるといけないからあえて何も言わなかったそうです・・・。。

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