妖怪・怪異・八百万の神々

その大学は共学で下宿生が利用する寮も女性寮、男性寮と別れていました。ある日、その寮を利用して大学に通うT君が自分の部屋に授業も終わったので帰ろうと歩いている途中、ふと女性寮を見上げると、3階の部屋の窓から遠くを見つめて顔を上げている女の子がいるのに気が付きました。「あっ可愛い子だな、どこの学科の子だろ」とその時はあまり変だと思わなかったらしいんですが・・・

次の日も、また次の日も同じ角度、同じ方向を見つめて顔を上げているので、T君は気になり・・・外から「何見てるの？」と呼び掛けると、その声に気付いたのか、上げていた顔を降ろし、その女の子はT君を見ました。確かに綺麗な子でしたが返答はなくT君を無表情で見つめているだけ。T君は「まぁ良いや」とその女の子に手を振り男性寮に帰りました。女の子も無表情ながら手を振り返してくれました。

それからしばらくし、T君が女性寮のMさんの部屋に用があったので行くと、女子寮の部屋の窓というのは床から2メートル以上あり、外を覗く事、ましてやあの女の子みたいに見上げるなど不可能な高さに気付きました。Mさんも部屋の形はどの部屋も皆同じと言うのでT君はあの女の子が不思議に思い、その夜、外から3階のあの女の子の窓を見るといつものように見上げています。

部屋の明かりも付けないで見上げているので変に思い、T君が一度逢って聞いてみようと思い、その寮の管理人に事情を伝え、その女の子に逢わせて貰う事になりました。すぐさま管理人と二人でその女の子の部屋まで行きベルを鳴らしました。ですが返事はありません。管理人も心配になったのでマスターキーでその部屋を開け、入りました。

部屋はまっ暗でしたがT君はそんな事は関係なく女の子の方へ歩み寄りました。「部屋の明かりも付けないでいつも何見てたんですか？」T君の問い掛けに返事はなかったので、T君が女の子に触ろうとしたその時。「パチッ」管理人が電気を付けました。

その瞬間、T君も管理人も
「ギャーーー」
全寮に響き渡る程の悲鳴を上げました。その女の子は首を吊って死んでいたんです。後日、警察の調べでその女の子はT君が発見した時にはすでに死後2週間たっていたそうです…

T君が発見した時から死後2週間たっていたと言う事はT君が話し掛けた時にはとっくに死んでたんですよ。じゃあなぜあの時…