巨大な鳥の妖怪「鷲駿」

猟師から聞いた話なんだが、昔に自分の友人の猟師が、山で子犬を拾ってきたそうだ。まだ目も開いていない赤子で、なぜか山の中に一匹だけ落ちてたそうだ。野犬の子犬は、成長すれば猟犬として良く役に立つ。喜んで育てていたら、何か犬と違ったそうだ。

真っ黒でゴワゴワした毛が生えてきて、犬の毛質とは違う。耳は丸い形をしていて、犬と違って尻を付いて座ることが多い。ミルクを飲むときも前足を使う・・・しばらく育ててみてやっとわかった。・・・クマの子供だったのだ。何であんな所に転がっていたのか解らないが、クマの子だった。

たまげたもんだがこれはこれで嬉しい。クマは犬より鼻が良いし足も速い。力もあるし犬より役に立つ。なので育て続けることにした。そんなこんなで1年経って、結構大きくなって、初めて狩りに連れて行くことに・・・。すると突然何かに反応して、どこかへ走っていく。犬のおかげで見失わずに済んだものの、あまりの足の速さに驚いた。 何を見つけたのかと思えば、木の中に顔を突っ込んでいる。キョトンとしていると、野生の日本ミツバチの巣をくわえて持ってきたのだった。

それから半年経った日、今日も何かの臭いに釣られて、崖っぷちまでやってきた。何があるのかと上を見てみればでかい何かの鳥の巣。ヒナもいるが、ヒナが鶏ほどもある。しかもその横に転がってるのは死んだ鹿・・・巣もかなりでかい。 「おめぇ・・・とんでもねーもの見つけたなぁ・・・」と思わずつぶやいた。

巣の下である自分の足下にはたくさんの骨が散らかっている。しばらく考えていると、バサッバサッバサッとかなりの羽音。飛んできたのは、身の丈3メートルはある化け物のような鳥。ハヤブサに鷲を足して2で割ったみたいな奴がそこにいる。尾っぽの先にたなびく飾り尾も偉く長い。

羽を広げてこちらを睨む。もの翼長がとんでもなくでかい。10m以上はあったそうだ。羽の内側には青色の斑点があり、目は∞の形に瞳を入れた感じの目をしていた。あまりの馬鹿でっかさに声も出ない。急いで逃げようとしたが、腰が抜けて逃げれない。そのとき、猟熊が自分を背中に乗っけると猛スピードで走り出した。犬もそれに釣られて走り出し、何とか事なきを得た。

その頃から自分の里で牛や馬がピンピンと姿を消し始めた。牛小屋は屋根から破壊され、中の牛を捕っていく。紛れもなくあの怪鳥に違いないと確信し、そのことを暴露し、退治に乗り出した。牛を一匹広場に置き、猟師が総出で迎え撃つ・・・という作戦だった。

明け方、バサッバサッバサッ・・・大きすぎる羽音と共にそいつはやってきた。牛を足で捕まえると飛んでいこうとした。ババンッバーンバババーン!!!と、鉄砲の音が響いた。しかし、そいつは何事もなかったかのように逃げ去っていった。奴のいたところには血痕が結構な量残っており、それ以来奴は来なかった。

調べたところそれは「鷲駿」という妖怪だそうで、ひらがなで書くと「ぐはい」読みは「ぐわい」だという。

メールアドレスが公開されることはありません。