以前に何かの本で読んだ不思議な話。ある旅人が丹沢山中で夜をむかえた時、夜露をしのぐ為に仕方なく道端の「サエの神」の祠で夜を明かそうとした。夜も更けた頃、どこからともなく二人の声が聞こえてきた。
「お~い、サエの神、そろそろ行こうや」
「いや~今日はダメだ。お客人が来てるんでな。今日のところはみんなで行ってくれや~」
そんな会話を旅人はウトウトしながら聞いていた。
しばらくするとまた声がする。
「サエの神よ~今帰ったぞ~。」
「どうだったんだ??」
「あ~男だったよ。だがアレは15までの運命だ。最期は川で果てる事になるな~」
そんな会話を聞いた旅人は、翌朝近くの村を周ってみた。
すると、不思議なことに昨夜生まれた男の子がいるという。そこで両親に昨日の出来事を話し、子供の為にサエの神を大事にするようにすすめた。両親は、その日から「サエの神」の祠に赴き、信心深く生活し続けた。
やがてその子は釣り好きになり、毎日のように山に釣りに入っていった。そして、その子が15歳になったある日、釣り竿を壊して家に帰ってくると不思議な話をしだした。
「今日、おかしな事があった。川で弁当を食べていたら上流の方から一人の男の子がやってきた。そして、その子が言うには・・『お前は本当なら今日で命が終わる運命だ。だが親が信心深いので、60になるその時まで命を預ける』・・と言われた」
そう不思議そうに話したという事だ。