【蛇囚人氏の怖い話】守護霊が見える人

この前タワレコに行ったんですよ。そしたら「久しぶり」って声かけられて、「ん?」って思ったら昔の知人で話してたら「ケンジさんが謝りたいって言ってたよ」って話になって、ケンジさんってのは共通の知人でまぁ色々あった人なんですね。俺が22歳ぐらいの時だから今から10年以上前の話。当時俺は京都の町中に一人暮らししてて(このマンションも色々あったけどまたそれは別の機会に)そのマンションの近所にこじんまりしたバーがあったんです。でよく一人で飲みに言ってたんです。そこのマスターがケンジさん。お互いレゲエ好きでかわいがってもらってたんですね。


でケンジさんこのバーする前はなにしてたんですか?って聞いたんですよ。ケンジさんが経営も自分でやってるバーだったんで。そしたらバーやる前は外国をふらふら旅したりしてたんだけどその前は裏ビデオ売って暮らしてたって話になって。ケンジさんはまぁかなりヤンチャ系だったみたいで昔。ヤフオクで売ってたらしくて当時本人確証とかも緩くて無法地帯だったみたいで。で仕入れは仕入れ用専門IDを作ってそれで買ったDVD-Rをコピーして売るっていうスタイルで。Rなんか1枚40円ぐらいだから800円で売ってもばんばん儲かってそれだけで暮らしてたんだって。

である時また新作をほかの同業の出品者から仕入れて郵便局留めにしてたんで取りにいって持って帰ってきて中がちゃんと内容があっているかをCHECKしてたんだって(ちゃんと焼けてないこともたまにあるみたいでRなんで)である1枚を再生しようとしたら裏の記録面が1cmぐらいしか焼けてなくて。1cmぐらいしか焼けてないってあり得ない事みたいで60分ぐらいの作品だったみたいで「あー焼き損じか」と思って仕方ないなーって思ったんだけど一応再生してみたんだってそしたらすごい荒い画像の映像が始まって画面下端にタイムカウンターがある家庭用ビデオの映像っぽい感じで。

(ちょっとぼかします)SMクラブ風の部屋で画面左に若い女性。右に中年の女性。椅子に固定されて向い合せに座らされている。若い女性「お母さんお母さん」と終始泣き叫んでいる。中年女性すでに動かない。地面には吐しゃ物等。作業着の男覆面が入ってくる。手にはXXXX。XXXXで中年女性のXXXをXXX。XXXが無くなっていく。泣き叫ぶ若い女性。次に若い女性のXXXをXXXXでXXX。こちらのXXXもXXXX。画面ノイズで急に終わる。って映像で「なんだこれ….」ってケンジさんはなったんだけどとりあえずそのDVD-Rは捨てずに置いておいたんだって。それから1週間後ぐらいのある昼下がりに「スズキサーン」って声が玄関から聞こえて。(ケンジさんの名字)

なんかNHKの集金かこんなことして稼いでるのもあって警戒してたから無視してたんだって。そしたら「スズキサーン!スズキマナミサーン!」って言い出して「えっ!」ってなって。スズキマナミって遠く離れた故郷に住んでる母親の名前なのね。家出同然で出てきたから友人も知らない。でケンジさんもヤンチャだけら頭に血が上って「誰じゃこら!」ってなってドア開けて飛び出したら。がりがりで30代後半ぐらい真冬なのに半そでサンダルの男が立ってたんだって。にやつきながら。それだけでも異様なんだけど。

まず落書きみたいな刺青が身体中に入ってる。顔もビッシリ。あと手の指が両手合わせて5、6本しかない。一つは包帯にまだ血が滲んでる。足の指も同じく。でケンジさん唖然としてたら男が「アレカエシテコロサレチャウノ」ってニヤニヤしながら言い出して。であれの事だ。ってなってRを渡して。「誰にも言いませんから」って言ったけど反応は無くて。ヨタヨタ帰って行ったんだって。でベランダから下の道を見たら黒いデカイ車がとまっててそこへその男が入って行って。そしたら運転席の窓が空いて「シッシッ」って追い払う動きをされたんだって。

でカーテンから何から閉めて。次の日にはもう友達に頼んで引っ越したんだって。って話を聞かされて半信半疑だなーと思いながらもその日は家に帰ったんですよ。僕。でまたある日ケンジさんのバーに行ったらケンジさん元気が無いというか機嫌が悪くて。でどうしたんですか?って聞いたらまず客が入口で引き返す。空調が壊れる。ホームレスが10人ぐらい意味不明な事を呟きながら店に入ってくるで散々なんだよ。って言い出して。明らかに僕に敵意剥き出しな感じで。「あの話を人にしたのお前だけなんだよね」ってイラつきながら言われて。

でなんかすいません。って言ってたんだけど。もう入口の時点で店の雰囲気がヤバくて。我慢して僕もいたんですね。というかカウンターの両脇の席から明らかに頭は無いけど体は僕を覗き込む影の気配も感じていて。でも責任あるから我慢して座ってたんです。でケンジさんにもう閉めるから帰れ。って言われて内心ホッとして帰ってしばらく行かなかったんですよ。正直怖くて。そしたらある日ケンジさんから電話があって店を閉店するお前のせいだ。金を払え。みたいな事を言われたんですよ。

気持ちはわかるけどそんな事言われてもだから。携帯番号を変えて無視したんですね。で僕がケンジさんについて直接知ってるのはここまでなんですね。で、今日ケンジさんに会ってきたんです。家に行ってきたんです。結婚して小さいお子さんもおられるって聞いてたんで共通の知人からおみやげのおもちゃ持って。で久しぶりに会ったら柔らかい印象であの時はすまんかったな。って言われたんでこちらこそ。ってまあ和解みたいな感じで。

であの後どうしてたんですか?って聞いたらあの後工場で働き出してそこで怪我して運び込まれた病院で今のカミさんに出会って暫くして結婚して二年前に子どもが出来たそうで。今は幸せやで。って話で。奥さんは明るい方で今も看護師さんをやってらっしゃる方で手料理も頂いたりして。で昔話をしてたんだけどケンジさんがトイレに行った時に奥さんにごめんね。あの人酷い事したんでしょ?って謝られたんで。昔の事なんで。って応えたら許してあげてね。あの人も死にかけたんだから。って言われて。えっ!ってなって。話を聞いたら。

奥さんはかなり見える人らしくてケンジさんが病院に運び込まれた時にあっこの人私がいないと死ぬって直感で思って奥さんからプロポーズしたんだってすぐに。死ぬってそんな酷い怪我だったんですか?って聞いたら。「わたしもこんなんだしこんな仕事してるから色々見てきたけど首が千切れかけてる守護霊様を見たのは初めてだったのよ」って言われて。そうですか。としか言えなくて。結局奥さんの親族の方々が尽力を尽くしたからケンジさんはもう大丈夫ってなって籍を入れられたそうで。で夜になったからそろそろ帰ります。って言ったらケンジさんが「遅くにできた子だから可愛くてねぇ」って娘を抱いて言いながら玄関まで送ってくれて。

長々とすいませんでした。って言ったら「あのさあ工場で怪我したって言ったじゃない?」って言われて。はい。って応えたら。「あれ俺の不注意って事になってるけど機械に手をはさまれて前屈みになった時に見えたんだよ。確かに。俺の後ろに立つ男の足が。指が5、6本しか無い。俺そいつに押されて機械に手をはさまれたんだよ。なんで俺の所にあの男が来たんだろう。」って言われて。

「すいません。わからないです」としか答えられなかった。ケンジさんが愛娘を撫でるその両手には指が5、6本しかない。

おわり。

ちなみにケンジさんの奥さんの親族でこの件で1番尽力された方のお話。見かけは普通のおじさんですが凄まじい力を持ってらっしゃってその方の同僚の娘さんがヤクザと車で接触事故を起こしてしまい。無理な要求をされた事があったみたいで。その方と同僚と同僚の娘さんの三人で向こうの事務所に話をしに行った際に怒号の飛び交う中その方の胸の辺りからゆっくり赤くて毛むくじゃらの手が出てきて向こうの責任者の首を締めるのを娘さんが見たそうです。「もうこの件はいいから」と向こうから言い出して解決したそうです。

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