「黄泉トンネル」の先には

これは、ある山間の田舎町に高速道路が通った頃の話です。


高速道路を作るにあたり、何カ所かにトンネルが作られたそうです。高速道路の下にある、幅も高さも2m位の軽トラック位なら通れるのかな?と思えるトンネルです。町側からはトンネルに行くための舗装された道路がありますが、トンネルを出た先は小さな広場になっていて、すぐ山肌に向かう森という感じになっています。

作った当時は使用するはずだったのでしょうが、私が友達に連れて行ってもらったころには、何のためのトンネルなのか、見当もつかない状態でした。昔から、行先の無い道には、黄泉路(よみじ)(よもつみち)になると言われていますが、まさにその通りで、様々な噂が立ち始めました。

当時、少し離れた市街地で2件の行方不明事件があったそうです。離れたところでの事件だったため、当時その村のトンネルを怪しむ人は誰もいませんでした。結局その事件は迷宮入りしたそうなんですが、数年後、例のトンネル付近で変な噂がたち始めたそうです。

最初は、あのトンネルは地獄に繋がっているという噂でした。当時、人が寄り付かないのを良い事に、不良グループがトンネルをたまり場にしていたらしいのですが、その頃から一切近づかなくなりました。なんでも、不良少年の仲間の一人がトンネルに吸い込まれ、いなくなってしまったというのです。

その日は仲間5人が集まっていて、そのうち、酒でも飲もうという話になり、2人が買い出しに行ったそうです。そして、残った3人が世間話をしていると、トンネルの奥から、「おーい・・・」「おーい・・・」と人の声が聞こえたそうです。
「奥に誰かいるぞ!」
「見に行ってみよう」
3人は真っ暗なトンネルの中を山に向かって歩いていきました。

真直ぐなトンネルなのに、出口の明かりは見えなかったそうです。トンネルの出口あたりに行くと、焦げ臭く、何か燃えているようでした。「やばい、山火事じゃないか・・・」
そう言うと、一人の少年が駆けだしたので、慌てて二人もついていきます。

二人が追いついたとき、最初に駆けだした少年は、トンネルを出たところにいました。三人がそこで見たのは、あるはずの山肌ではなく、見渡す限りの焼けた平野でした。何かが燃えているのではなく、地面自体から炎が吹き上がっているような景色だったそうです。

「ここは、やばいよ!帰ろう。」一人が言い、一番前にいた少年の腕を掴み引き返そうとした時です。いきなり、巨大な炎が襲ってきて、もう無我夢中で走ってトンネルを引き返し、我に返ると先頭にいたはずの少年がいなかったそうです。買い出しから帰ってきた少年二人と四人でもう一度、恐る恐るトンネルを進んでいくと、そこは普通の山肌がある何時もの風景に戻っていたそうです。

このトンネルの付近の町で二人の消息不明の人がいます。少年を含めると、三人の人間がいなくなっているのです。そして、行方不明になった少年の腕を握っていた少年の右腕は、今でもものすごい火傷の跡が残っています。

こんな話を聞いたことがありませんか?
行先が無く途中で止まった道は黄泉路になる・・・

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