いつも蔵にいる男の子

私の友人の一人に、小学生のころに転校してきた友人がいました。




家が近かったこともあって私たちはすぐに友人関係となりました。彼は、両親の仕事の都合で小学生の間、祖父に預けられることになったのだそうです。その祖父なる人は、近所でも有名な頑固親父で、自分に関係ないことでも悪さしている人がいればところかまわず雷を落とすような人でした。ただ、常にこちらに非があるときばかりで、その人の言うことに間違いはありませんでした。なので、近所でも評判は良かったのです。

子供が危険なことをしていればそれを注意してくれることもあったので、子供を持つ家庭では特に支持されていました。そんな人の元に預けられたせいか、その友人もいつも叱られてばかりだったようです。その人にしても、自分の身内だから特に厳しく叱っていたのでしょう。

時には、家の古い蔵に何時間も閉じ込められることもあったそうです。当時の年頃であれば明らかに怖がるようなことだったはずですが、彼は全く堪えていなかったようです。その理由を聞いてみると、どうやら蔵の中には誰かいるようでした。

どのような人が居るのかを聞いてみると、自分と同じくらいの年頃の男の子だそうです。閉じ込められたときはいつも傍にいてくれるので、怖くも寂しくもなかったのだそうです。

しかし、私はその蔵を見たことがありましたが、古いながらもしっかりとした造りの蔵は人が入り込めるような隙間があるわけでもなく、天窓はかなり高い位置にありましたし、普段は頑丈な南京錠にて閉じられているはずです。

しかし、そんな子供がずっと蔵の中にいるのも不思議な話です。ある日、その友人が風邪をひいて学校を休んだ日、私は友人宅にプリント類を届けに行きました。その時、友人は寝ていて、応対してくれたのは友人の祖父その人でした。

私は、いい機会だと思って友人から聞いた話をしてみることにしてみました。蔵の中に子供がいるかも知れない。こんな感じで話をしてみると、その人は途端に厳しい表情に変わり、近くの戸棚から何かを取り出して蔵に向かって行きました。

蔵の前で何かをしていたのを見ましたが、詳しく何をしていたのかはわかりませんでした。友人の祖父は、このことは友人には言わないで欲しい、と私に言ってきました。それから、友人は蔵に閉じ込められることはなくなったそうです。

なお、風邪が治りかけたあたりで近所のお寺に連れて行かれたそうです。何をしたのかはよく覚えていないそうですが。

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