【登山の怖い話】神の領域に入りかけた男

古くから高山地帯は神聖な神の場所として、多くの国で尊敬を集め、恐れられてきた。富士山を例にとると、五合目付近にはまだ植物が生えているが、それをすぎると高山植物も生えなくなる不毛の地となる。昔からこういった生命を拒む高山は神の領域と言われてきた。

人間も高山に行くと、幻覚、幻聴、めまい、吐き気、頭痛などの多くの障害を人間に与える。今は高山病として一まとめにされてしまうが、昔は神の警告として受け入れる文化が多かった。高山で幻覚を見て、そのまま現実の世界に戻れなくなってしまうケースも多々ある。私もその一端を味わったのでその恐怖が痛いように分かる。

俺が海外の中級クラスの山を登ってる最中にそれは起こった。突然回りに人影がちらほら見え始め、少し行くと完全な人になった。俺と一緒に歩いているその人たちは、太陽の反射のような強い光を放っていた。俺を取り囲むようにふわふわと歩き続けている。そのときの俺は恐怖なんて感じなかった、ただ心地よかったふわふわと歩き続けた。

気づいたときにはおれは救急隊のテントに寝ていた。パーティのメンバーに言わせると、聞いた事のない国の言葉を話しながら、今までの倍の速さで歩き始め、仲間が見失うほどの速さだった。仲間が追いついたころには俺は倒れていた。あの時覚えてるのは、このままいくか?ここにとどまるか?どっちかを選択したような感覚。そのまま行ってたら、この世界に戻れてなかった気がする。

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