これは一昨年の夏の話なんだけど、ウチの嫁さんと二人で美味しいラーメン屋さんに行ったんだ。腹も膨れ、俺はそのラーメン屋さんが夜景スポットに近い事を思い出し、帰り道にドライブがてら寄って帰る事にした。
何年も行ってなかったので少し迷いながらも夜景スポットへ向かってるとどうやら道を間違えたらしく、ドンドン山奥へと進む羽目になってしまった。
山奥へ進むにつれて助手席の嫁が無口になっていくのを見て、俺は嫁の霊感が強い事を思い出した。Uターンする程の道幅も無く細い道になってしまい、先に進むしかない道を真っ直ぐ行くと《○○霊園》への案内看板が目に入り、助手席の嫁は俯いたまま全く喋らなくなってしまった。
今までも薄気味悪い所や霊的な物を感じる場所では無口になっていた嫁なので今回もヤバそうな雰囲気を悟った俺は、気を紛らわせようと大きな声を出し、明るい話題で場を和ませようとした。
しかし嫁は、相変わらず黙って俯いたままだった。俺も気味が悪かったが、仕方なく車を走らせていると道が広く開けた場所を見つけ、すぐにUターンをして、来た道を急いで戻って帰った。ある程度戻った所で見た事のある景色になり、そこがまさしく目的地だった夜景スポットだと気付き嫁に言うと、夜景なんていいから早く帰ろうと言うので、結局その日は夜景スポットへは行かずに帰路に就いた。
市街地まで戻り、ネオンで明るくなった所で俺は恐る恐る嫁に聞いてみた。
「ねぇ、ずっと俯いて黙ってたけど、さっきの所ってやっぱり何か居たの?」
すると嫁は
「え?見えてなかったの?細い道沿いの両脇に、人がズラリと並んでジッとこっちを見てたのが・・・」
それ以来その場所には行ってない。