洒落にならないって程でもないけど俺の兄貴が最近洒落にならんって騒ぎ出したお話。俺が小学2年の頃、夏休みを丸々母方の祖父の家に泊まることになったんよ。じいさんの家は父方の家と比べらんないくらい広くて、しかも親がついてこないってこともあって一つ上の兄貴と超ハイテンションで転がり込んでさ。もうその日から虫取りやら川泳ぎやら僕夏真っ盛りだったんだけれど、それまで活動の拠点にしてた一番風通しがよくて、明るくていいにおいがする部屋をじいさんに取り上げられて、それで何するかって言うと木で作った段々?これは俺ら兄弟も一緒に作らされたんだけど、それによくわからん葉っぱやら何やら小道具を一つ一つ大して変わらんのに順番においていくんよ。んで部屋の入り口と 部屋の奥に続く廊下の入り口だけあけて壁に赤い縄をはって 部屋の中は四隅に支柱作って段々囲むみたいに染めてないほっそい縄を結んで、あんまり物珍しかったもんだから触りたかったんだけれど触ろうとすると普段から怖いじいさんがさらに怖くなるから、あー 何でよくわからんことで俺らの部屋とられなあかんのじゃ。とか思ってた。ばあちゃんは火曜日過ぎたら全部片付けるけんつかっていいけんね。とかいってくれたけど その火曜日までが苦痛なんだよっ!って感じで。
で ついさっき掃除したばっかしなのになぜか俺らまでその部屋の掃除に参加させられて、掃除機使えばいいのに箒でいちいちやらされて。しかも縄とか段々触ろうとしたら怒られるから、いい加減兄貴も俺もフラストレーションたまってた「あさってね かどぬっさんがくるけんきれいにしとかんばならんと」だれねかどぬっさんて!? とかいいたかったけど、ばあちゃんのことは大好きだから黙って従った。
けどどうしても段々の中で気になったものが一つ。お猪口とお銚子 このセット。
本格的に段々にじいさんが小道具セットし終わった後。二人で忍び込んでお酌しあったんよ。兄貴が飲み終わって俺が飲んでるときにじいさんが部屋を通りかかってさ。じいさんの顔が虎眼先生みたいな顔になって、俺らは部屋の外に引きずり出されて張り倒された。俺が大声で泣いたもんだからばあちゃんが飛んできて、どうしたんね!?ってじいちゃんに聞いたら「もとし(俺)がみなわきしよった」 とかいったとたんにばあちゃんの顔が虎眼先生より怖くなって「あんたなんてことしたんね!!??」って。もーばあちゃんにそんなこといわれたらこの世に救いはないよって。確かに何度も注意されたけどそんないうならお子様の手の届かないとこにおいといてよっていいたかった。
当然兄貴はばっくれて結局俺一人悪者にされて なんか目隠しされて、水吐かされそうになったんだけど結局吐けなくて、位置的に段々のある部屋の正反対の窓もない暗いし黴臭い部屋に閉じ込められることになった。天井からドライフラワーみたいなのがいくつも下げてあって正直気持ち悪くてさ。しかも和紙でできたカーペットのうえに変な色の長い座布団みたいなの敷いて「その上から動いたらいかん」 って何度もいわれた。時間的に相当閉じ込められてたとおもんだけれど、不思議とおなか減ったりウンコしたくなったりしなくて自然と眠った。
こっから先が夢か現実かわからん。俺は段々のある部屋の奥の部屋で目が覚めて、鳥の声がチュンチュンいってて明るいから朝なんだなぁって。でもなんでこの部屋にいるんだろって思ってた。ばあちゃんがあんな部屋で寝てるのかわいそうだって運んでくれたんだろなぁってそう思ってたんだけれど、部屋抜けて 台所とか居間に行っても誰もいないんよ。したら二階から足音がするから ああみんな二階にいるんかとおもって二階に上がったら。全身真っ白な でっかい何かがいて、姿かたちはあんまり覚えてないんだけれど、はっきり覚えてるのは 昔の貴族がかぶってた烏帽子?かぶってて足は二本あるんだけど でっかいひとつの足袋に足を両方突っ込んでた。
そいつは俺に気づいたのか何なのか、爪先立ち⇒ペタン⇒爪先立ち⇒ペタン みたいな感じで器用にひょこひょこ近づいてきて、何か話しかけてきた。ただその話し声がなんていえばいいのかわかんないくらい変な感じで、ものすっごいでかくて響くコソコソ話?? とんでもなくうるさいんだけど、何いってるかは全然わかんなかったけど不思議と全く怖くなかった。伝わってないってことがわかったのかそいつは俺の手を引いて階段をまた器用にペタンペタン下りてあの段々がある部屋まで歩いた。その段々の前をしばらくぐるぐる一緒に回った後にお銚子とお猪口とって飲み始めた。ただどんなに飲んでもお銚子からは水(俺が飲んだときは味付けた水みたいだった)が出てて一杯飲み干すごとにまたあのやたらでかい声でなにやらボショボショ呟いては飲んでを繰り返してた。なぜかわからないけど俺はそれを見てるうちにやたらおしっこしたくなって、そいつから手を離そうとするけど離してくれないので、ちょっと力を入れて引っ張ると意外にもそいつはお猪口持ったままついてきた。しょうがないのでそのままトイレに行って小便した。小便してる間もそいつは呟きながらちびちびやってて、うるせーこいつ とか思ってたんだけれど 小便がなかなか止まらない。というかとまらない 自分でもびっくりするくらい。
したらそいつがずるーっと手を伸ばしてきて お猪口を差し出してきた。やたら美味しそうなにおいがしたので小便しながらそれを飲んだら、とんでもなく渋い味で飲んだ瞬間気持ち悪くなってむせた。それと同時にあれだけ滝のように出てた小便がぴたりと止まって、おおお すげえ! そう思ったときにはいつの間にか家の門の外にいた。チンコだしたまんま。朝だと思ってたのに夜中で 怖くなったので門をくぐって玄関へ。
入ろうと思ったのに鍵がかかってて なんか恐ろしくなったのでバンバンとを叩いたら、ドタドタドターっと中から音がしてばあちゃんが血相変えて飛び出してきた。「あんたどこいっとったんね!!??」って。あったことを全部じいさんとばあちゃんに話したら「たりがみさんじゃ」 って。なんか二人で納得してるから まあ怒られないんならいいかと思ってその日は寝た。びっくりしたのは次の日。俺は鍵のかかったあの部屋を抜け出して丸一日どっかにいってたらしい。その後俺は別に何もない 怪我も病気も身内に不幸も全くない
これで最後。兄貴に娘が生まれた 今年で4歳になるのだけれど、その子が最近家の中で見えない誰かとしきりに話してるらしい。で 兄貴自身はそいつを見たことがないってんだけど、兄貴の嫁さんがそいつが見えたらしい。真っ白で 大きくて 変なものかぶった奴。
そういえば兄貴もあの水飲んだから、今度は兄貴のところにいったのかと あいつ閉じ込められてもいなかったし、姪っ子の話し相手になるくらいだから悪い奴じゃないと思うんだけど、嫁さんは凄くびびってるらしい。
姪っ子は他にも変なものが見えるみたいで、俺が青い地蔵みたいな子供二人と手をつないでるとか、よくわからんことをいうから よくある子供の妄想かもしれないんだけれど。
もんぬっさんとか たりがみさんとか まらあどとか みなわきとか俺は一切判らんし じいさんは教えてくれない。一体何なんだろうね。