【山の怖い話】子供をさらう猿神と守りの小刀

刃物にまつわる話です。顧問に聞いた話です。顧問の出身は山陰の山奥で、私たちも行った事があるのですが、本当に山村と言う言葉が似合う場所でした。周りは山、顧問の祖父は猟をしていて、顧問も何度かついていったことがあるそうです。ある時、夜明け前のまだ暗い時間から山に入り山鳥を撃ちに行ったそうです。歩きなれた山道とは言え、辺りは暗く、灯りもありません。12,3歳だった顧問は足元に注意をし過ぎて、前を歩く祖父と逸れてしまったそうです。暗い山道で一人、頭に浮かぶのは祖父や祖母から聞いた山の物の怪の話が思い浮かび、気持ちはどんどん暗くなる。無意識のうちに御守り代わりに持ち歩いている小刀をぎゅっと握りしめていたそうです。降りようか、上ろうか。考えていると目の前の茂みがガサガサっと音を立てました。「熊か??猪か??」と怯える顧問の目の前に現れたのは、猿のような何か、でした。そして、その何かは喋ったのです。



「ボウズ、お前、一人か?」と顧問は驚きと怖さで喋ることができなかったそうです。
「そうか、はぐれたんか。」と何かは一人で喋っています。
「ちょうどいい、今年のXXXはお前にしよう。」
そう言うと、顧問の方に手を伸ばしてきました。怯えきっている顧問は声をあげることも、逃げることもできず、ただ、小刀を握り締めて心の中で祈っていたそうです。
「あっちいけ、あっちいけ、刀もってるんだぞ、あっちいけ。」その何かの手が触れるか、触れないかのところで止まり、その何かはこう言って去っていきました。「ちっ、ボウズの癖に刃物なんか持ち歩きやがって。」怖かったのと安心とで、その場にへたりこんでしまった顧問を祖父が見つけたのは、その少し後でした。帰りの道で、そのことを祖父に話すと「ああ、猿神だなあ。やつらは子供を攫っていくタチの悪い奴らだ。ええか、〇〇(顧問の名前)山で刃物は大切な物だ。化物どもは金気を嫌う、特に刃がついている物を嫌う。自分の身を護る為にも刃物は忘れちゃいかん。」顧問はウチに帰る前に塩で清めてもらい帰宅したそうです。

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