田舎で聞いた話。田舎の友人から聞いた話です。彼は営林署に勤めており、よく山に入ることがあるそうです。ある年の夏、大雨が降り植林したばかりの山で山津波が起きました。翌日、雨も小降りになり、苗木の様子が気になった彼は「小雨だし、大丈夫だろ。」と思い雨具を着て、様子を見に行きました。出る前に「苗が気になるんで、ちょっと山行ってきます。」と上司に言うと「止めとけって、山津波あったし。えらいもん見るで」と止められましたが「小雨になったんで大丈夫っすよ」と彼は出て行きました。
山裾を軽トラで入っていくと、山津波の影響か石や土塊がゴロゴロしており「車では自由が利かない」と思い、途中から徒歩で山に入っていきました。滅茶苦茶になった山道を登っていると、誰か降りて来るような音がしました。「そういえば、○○さんの木もこの山だったよな、様子見に来たんか?」と思い、「おーーい、○○さんですかーー?」と呼んでみました。返事はなく、山を下ってくる蓑傘を着込んだ大柄な人影が見えたそうです。「誰だろう?いまどきあんな格好して、あんなにデカイ人いたっけなあ?」と思っていると、その人影は段々と近づいてきました。2メートルはあろうかと言う長身に蓑傘を着て、降りてきた人影には足がありませんでした。ただ、歩く音だけが「グチャ、グチャッ」として思わず道を開けた彼に、「どうも」とくぐもった声で挨拶をして行きました。そのまま固まっていた彼は雨の音で我に返り、急いで下山するしました。途中で何度かコケたそうですが、後になって気がついたそうです。営林署に戻ると、彼を引き止めた上司が泥だらけの彼を見て言いました。「いやなモン見たろ?じゃけえ言ったのになあ。」
彼はその話を私にしながら「絶対、あの山なんかおるで、マジで」と力説していました。
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人も神様も山が心配なのはおんなじだ。同じ心を持っている。きっと仲良くなれる