学生の時に体験した話。授業後にサークル仲間4人とクラブハウスでダベっていたのだが、夏だったせいかいつの間にか怪談話になっていた。ただどれもこれも有り触れた持ちネタばかりで、「それ聞いたことあるわ」の連発で凄くつまらない。
でも、いわゆる文科系サークルだったので、「じゃ、いっそ自分で最強に怖い話を作って、それを学内に広げようぜ」という話になった。それぞれ一時間だけ考える時間をもらい、一人ずつ発表。クラブハウスは戦後すぐに出来た古い建物で、夜も20時を回っていてムードはたっぷり。だけど俺はあまり良い話が思い付かなくて、悩みまくっていた。元々、考えるのが苦手な方だったから。
でもクラブハウスの階段を眺めていたら、ふと、幽霊に名前を付け、それでインパクトを出そうという考えが浮かんだ。一般的ではないけど有り得る名前…と想像した途端、スルッと『ソマコ』という名前が浮かんだ。後はそこから何故かスルスルと話が出来て行き、クラブハウスの階段に踞っている看護婦の霊の怪談が、頭の中に出来上がっていた。
一時間後、じゃんけんに負けた俺から話す流れになった。
「このクラブハウスには幽霊が出るんだよ。名前が『ソマコ』と言って…」
話し始めた瞬間、他の2人がギャーと叫んだ。冒頭でいきなり何なんだよと、そう聞きつつも俺も嫌な予感はしていた。叫んだ2人が作った話の幽霊の名前も『ソマコ』だったのだ。
お互いドラマやマンガで聞いたことはないし、その場でふと思い付いた名前が何故3人も一致するんだ、とパニックになった。そいつらがどんな怪談を作っていたのかは覚えていないが、悲鳴を上げながらクラブハウスから逃げ帰ったのは覚えている。