4月の中旬頃、高校の時の男友達から電話があり、二人で飲むことになったんです。高校の時はそれなりに仲が良かったのですが、大学に進学してからは会うこともなくなり、話すのは2年ぶりでした。彼はとても興奮していて、近況報告もそこそこに「すごいものを見つけた」と言って一枚の写真を見せてきました。その写真は、傾斜の急な竹藪の中で撮ったもので、右上に小さく石の鳥居が写っており、写真下の中央から右上の鳥居へ向かって枯れ沢が繋がっています。その沢を登っている途中に撮った写真のようでした。彼によると、鳥居の横の竹藪にクシャタガーブという神様が写っているそうです。いわゆる心霊写真のような、オーブや影みたいなものは全く写っていませんでした。私は、変な宗教か何かの勧誘だろうと思い、そういう話には興味がないと言って帰ってしまいました。
その一ヶ月後、彼がその竹藪で死体になって見つかりました。彼は死ぬ前に「クシャタ様が見えるやつはいないのか」と知り合いに聞き回っていたそうです。クシャタ様というのは、その土地の守護神のようなものらしく、怒りを買うと地震を起こすのだそうです。そして、彼は遺書のようなものは残していませんでしたが、怒りを鎮めるために生贄が必要だということを家族に話していたそうです。彼の部屋は綺麗に掃除されていました。
私は幽霊や神様というものが居るかどうかなんて分かりませんし、彼が神様に取り憑かれたなどという噂は勿論信じていません。しかし、私が彼の話を聞かなかったあの日から一ヶ月経っても、彼が何を思いどうして自死を選んだのか、とても理解できそうにありません。あの時、彼の話をよく聞かなかったことをとても後悔しています。