ロールカーテンの吊るされた某空きテナント

ひと月ほど前の夜、空きテナントの前を通ったんだ。そこのテナントは以前ブティックで、3枚の大きなガラスがはまったショーウィンドゥがあった。入った事はないけど知っている店が潰れるのは寂しいもんだよなーと思いながらウィンドゥを横目に通り過ぎた。何かおかしい…視界が少し暗くなった気がする。店側が何か急に暗くなったように感じた。

ガラス越しに暗い店内を覗いたが、何も置いてないフロアがあるだけだった。街灯か車のライトが反射したのかな?そう思ってその日は通り過ぎた。数日前の夜、またテナントの前を通った。するとまた店内が暗くなった気がした。先日の違和感の事なんか全く忘れていたが、二度目となるとちょっと気になる。店内を覗いたがやっぱり何もない。気のせいかなと思いながら、二歩ほど横にずれて店内を覗いていた。顔がショーウィンドゥのガラスの継ぎ目を越えた時、店の奥にマネキンがあるのに気付いた。まだブティックの名残が残ってたのかと変に安心した気持ちになった。…がそれは間違いだった。血まみれの女性だった。

全力で人気の多い表通りまで走って、翌日友達と一緒にテナントに行った。昼ならそこそこ人通りもあるからあまり怖くないしね。テナントの中にはマネキンも女性もいなかった。すぐ近くの本屋の店員にテナントの事を聞いたところ、運転を誤った軽自動車がショーウィンドウに飛び込み、従業員が大怪我したらしい。それを期に経営のかんばしくなかった店を閉めてしまったんだとか。テナントをあらためて見てみるとショーウィンドゥの下の壁に補修した跡があった。

3枚のガラスの内2枚を突き破ったんだろうなと事故の様子を推測できた。その後神社でお祓いをしてもらい御守りを買って帰った。特に怖いことは起こっていない。今になって思い返してみると、あの女性は事故で割れなかったガラスにのみ姿が映っていたのではないかと。また友達の話だとテナントはまだ新しい店舗は入っておらずウィンドウにはロールカーテンが吊されているとの事。もしかするとテナント主もあれを見ちゃったんじゃないかな?

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