某島にある『地獄の地下道』での奇妙な体験

5年ぐらい前に、とある小さな島に行ったんだけど、そこにはお寺があって、地獄を模した地下道があったから家族で入ってみたのね。そうしたら中に小さな男の子がいて、うちの上の子と下の子の真ん中ぐらいの年齢だったから、仲良く一緒に進んだ。その子はすごく活発で、真っ暗な洞窟の中でも歩き慣れてて、お寺の子か地元の子で毎日来ているんだろうなと、最初は思っていたんだけど・・・

こっちだよ!こっち!こっち!って元気に案内してくれて、でも、いつまで経っても出られなくて、結局50分ぐらい経ってしまったのね。私はだんだん、この子おかしい・・・と思い始めて、この子の言う通りにしていたら出られない、とまで考えてしまった。だいたい真夏なのにその子は着物を着ていたんだよね。浴衣じゃなくてウールのアンサンブルの着物。男の子用っていうのも珍しいし。そう思ったら、その男の子は後ろから来たご年配の人たちの方にくっついて行ってしまった。そのあと私たち家族はすぐにその地下道の出入り口を見つけて出たんだけど、あとで看板を見たら、地下道の所要時間は出口まで10分程度って書いてあった。洞窟の中はものすごく気温が低くて、出た時ほっとしたのを覚えてる。あの男の子はなんだったんだろう。考えてみたら、こっちだよ!こっち!しか話してなかったような。

昨日、上の子に島やお寺に行った時の事を覚えているかどうか話を振ってみたら、「あの子は『尾道から来た』って言ってたよ」ときっぱり言ってた。洞窟の中では私も主人も一緒にいたし、子供たちだけでちょっと先に行って姿が見えなくなってもほんの数秒の事だし、声は常に聞こえていたと思うし、そんな会話は絶対に無かったと思うんだけど。 で、その会話のあと上の子は児童館や図書館に行って、夜に帰ってきたんだけど、もう一つ言ってた。
「島から尾道に戻って街を散策してた時、あの子が用品店の中にいて、 すごく近くまで寄って行ったら、埃をかぶったような古いマネキンだった。顔も着物もそっくりだったけど、なぜかお母さんには言えなかったのを思い出した」

お寺では住職が母親を大切にしていたという説明を受けて(だから入場料に親子割引もあったし)、感動したのを思い出しました。あの子が生きている人間でないとしたら、親を大切にするお寺で親を探していたのかなと、今、思ってる所です。そういえば当時は、不思議な男の子より、島で潮の流れの速さというのを目の当たりにしてそっちにビビってました。(湘南あたりの海の満ち引きしか見たことがなかったので)でも上の子の話を聞いてなんとも言えない気持ちです。

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