墓を荒らして死体を嚙る妖怪

知り合いの話。彼のお婆さんの実家の村が、まだ土葬をしていた時代のこと。家で不幸があり葬儀の準備をしていると、隣村から親戚がやってきた。親戚は家人に、隣村でカジリが出たと伝えたのだという。

カジリというのは文字通り齧る化け物で、死体を掘り起こして食べるのだそうだ。どんなに墓の番をしても、夜の間に棺桶の中から死体は消え失せ、朝には食い散らかされた死体が、村外れに投げ棄てられていたという。

死体を食べられてしまった家には、災いが起こるといわれていた。カジリは経文や仏具が苦手とされていたという。しばらくの間、その村で埋葬された死体は、身体中に墨で経文が書かれていた。お婆さんがまだ幼い頃、彼女のお婆さんから聞かせてもらった話だそうだ。

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