物干し台にいたガリガリの老人

今日久しぶりに実家に行って、今さっき帰って来た。実家と言っても今は祖父と祖母と猫が住んでいるだけなんだけど。母がまだ生きてて一緒に住んでいた頃とは違って、陰湿な雰囲気というか、とにかくじめっとしてて、いい感じではなかった。




今日は午前中に雨が降ったからそのせいだろうと思い込むことにし、猫を膝に乗っけてしばし祖父母と閑談した後、ふらふらと近所を歩き回った。そう広くはないのですぐに一周してしまい、先祖や母が眠る墓に行って草むしりなんかして家に戻る頃には夕方になっていた。角を曲がって坂道を下り始めると実家が見えてくる。その二階の物干し台に、誰かが立っていた。すぐに祖父だと思った。足も悪くなってるのに二階に上って・・・ あぁ、また祖母と口げんかするんだろうなぁ・・・そんなことを考えながら歩いていくとそれが祖父ではないことに気づいた。

祖父より小さい。その爺さんはぼんやりと佇んで南の方を見ていた。ボサボサに伸びた白髪、赤黒い肌、猫背、だらんと両腕をたらした撫で肩、肢体はガリガリに痩せてるくせにやけに丸く突き出た腹。身体の特徴はやけによく覚えているのに服装はまったく印象に残っていない。恐怖なのか、困惑なのか、よくわからないまま早足になって、あとは顔を上げずに家に入った。

笑って「おかえり」と言う祖父母に曖昧に頷き、窓枠に腰を降ろした。祖父母は微笑んでいるが、空気が重い。家に来たときよりも厭な感じが強くなっていた。拒まれているというか、歓迎されていないというか。祖父母じゃない、何か別の感情が充満しているようだった。自分もよくわからないけど、とにかくそう感じた。その空気は嫌でも祖父母や猫ともっと一緒にいたくて長居したけど、そうするべきじゃなかったのかも・・・と今、頭痛と耳鳴りがひどい状態で後悔している。祖父母に変わった様子は見られなかったし、猫があらぬ方向をじっと見るのはよくあることだし・・・物干し台にいたあれと、あの家の空気は何だったんだか。

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