マンホールの蓋が消え、不思議な痕跡が残されていた

同僚の話。ある山中の集落が生活排水処理設備を設置することになり、彼が担当になった。メインの排水本管が埋められてしばらく後、集落から緊急の連絡が入った。マンホールが何箇所か失くなっていて、危ないから至急代替品を手配してほしいという内容だった。

現地に赴き確認すると、確かに五ヶ所で点検口の鉄蓋が盗まれていた。たちまち鉄板を架けて対処し、新品を手配し直した。出てこないとは思ったが、一応地元の警察にも届け出た。
「困ったヤツはどこにでもいるな」
そう考えて終わったのだそうだ。

半年経って工事が終わる頃、マンホールが発見されたとの報告を受けた。奇妙なことに、発見された鉄蓋すべてに不思議な痕跡が残されていたという。牛のものに酷似した大きな歯型が、何箇所も鉄を齧りちぎっていた。以降現在に至るまで、マンホールの蓋は失くなっていないということだ。

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