後部座席いっぱいにいつの間にか牛が乗っていた

友人の話。夜の峠道を車で走っていた時のこと。いきなり誰もいない後部座席に、何かの気配が湧いたのだという。その道は出るという噂があったので、思わず緊張してしまったそうだ。嫌だったが、恐る恐るルームミラーを覗き込んだ。

後部座席一杯に、大きな牛がくつろいでいた。最初は全体が目に入らず、牛だとは分からなかったらしい。仰天して振り返ると、そこには何もいなかった。しかしルームミラーには、相変わらずシートを舐めている牛が映っている。どうしたらよいか分からず、そのまま車を走らせた。

峠道を下りきる頃、ふっと気配が消えたのだという。ルームミラーには既に何も映っていなかったそうだ。

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