うちの爺さんの田舎は四国の山ん中で、子供のころに結構大きな山火事が発生したらしい。火の手は相当に強かったらしく村の衆はなすすべなく見守るほか無かったと。村では段畑に新しい作物を植え始めたばかりで、その畑を気にした若いモンが 様子を見に行ったということだ(本当は危険すぎるのでやっちゃいけない)。
しばらくして戻ってきた若者は青ざめて他の村人に支えられなければ歩けないような有様だった。山の中から四つんばいでガクブル状態で逃げてきたようだった。その若者は村人からなだめられやがて落ち着くと、「コロビが近くで啼いていた。俺のすぐ近くだ。だから火事はおさまるだろう。」という意味のことを年寄り連中に言っていたらしい。年寄りは神社の宮司にあわてた様子で話しに行き、宮司は苦い顔をしたそうだ。しばらく待つと本当に火事は嘘のようにおさまり作物も無事だったが、村の大人は一様に硬い表情のままだったという。
数日後、村の有力者の家に爺さんが遊びに行くと一番の別嬪になるといわれていた娘がきれいな着物を着せられてご馳走を食べていた。爺さんが料理をつまみ食いしようとするとその場にいた大人から厳しく叱責され、
爺さんの両親は泣きながら謝りに行ったそうだ。
また数日後、爺さんが父親と道を歩いていると大人でも入りそうな大きさの甕を担いだ人足と宮司、それと先ほどの村の有力者が行列のようなものを組んで、火事のあった山のほうに進んでいった。それ以来、娘さんの姿を見ることは無く、娘の両親も姿を消した。大人に聞いても「奉公に行った」「行った先で気に入られて幸せに暮らしている」と、言うような話しか聞けなかったらしい。
ちなみに爺さんはその娘が初恋だったらしいw
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生贄だったのかな?