同級生の話。彼の住んでいる地方の山には、「蛇の池」と呼ばれる池がある。大蛇が潜んでいるという伝説があって、一昔前には目撃者も結構居たそうだ。
池の上には、切り出した材木を運ぶためのモッコが走っていた。モッコとは綱で編んだ籠のことで、これを滑車で吊るして動かしていたとか。時折その籠から池に落ちる物があった。木っ端とか道具とか、その他諸々。
そういった落下物は翌朝、必ず池端の土手の上に、投げ出されていた。大きい物も小さい物も区別なく、池に落ちた物は水の外へ。大体がちょこんと優しく置かれているのだが、金物の類いが落ちた場合は別で、池から随分と離れた場所に突き刺さっているのだという。まるで力任せにブン投げられたような感じで。卵が落ちた場合は真逆で、絶対に殻一つさえ浮いてこないのだとか。
「蛇さんは 金物が大嫌いで 卵が大好き」
蛇の池のためか、彼の地元ではそういう認識が当たり前だったそうだ。
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「あなたが落としたのは金の金づちですか、それともこの鉄の金づちですか?」
などと問うてきたりはしないのだな。