【味覚を盗む】『舌盗み』と呼ばれる変わった物の怪【妖怪】

友人の話。彼の実家がある山村には、一寸変わった物の怪が出たという。「舌盗み」とか「舌盗り」と呼ばれるそれに取り憑かれると、食べ物の味が全然わからなくなってしまうそうだ。山の主が他人の舌を借り、様々な味覚を楽しんでいるのだろうと言われていた。

姿形がない存在なので、力ずくでは追い払えない。これに憑かれると、とにかく好き嫌いをせずに、何でも食べなければいけないと伝えられていた。色々な食べ物の味を堪能すると、舌盗みは満足して山に戻るからだとか。なぜか胡麻の味は嫌いらしく、胡麻を沢山摂れば早く開放されるとも伝わる。

何とかして舌盗みを山に帰すと、元通りの味覚が戻ってくる。生命に別状はないということだが、秋の収穫期にはとにかく怖れられ、そして嫌がられた存在だったそうだ。偏食はいけないっていう教訓が、化け物になったのかもしれない。彼自身はそう考えているのだとか。

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