彼の実家の裏山には、昔から小さなペット霊園がある。そのせいか、家の中に犬が通る道があるのだという。
彼の部屋は一階だ。玄関から一直線の廊下の突き当たりにあり、部屋の外からはすぐに山が始まっている。夜になると時々、外の廊下からタッタッタと何かが部屋に滑り込んでくる。引っ越してきたばかりの頃は、さすがに飛び起きて布団の周りを確認していたが、気配はすれど何の姿形も見えない。そのうちに慣れてしまい、今ではまったく気にならなくなったという。なぜ犬とわかるのかと聞くと、フンフンと匂いを嗅ぐ音がするだからだと。寝ている彼の頭をしつこく嗅ぎ回って、飽きると山の方に向かうのだそうだ。
近所には猫の道もあったらしい。夜中になると台所で、ニャアと餌をねだるような泣き声がしたと聞く。家人が不憫に思ったのか、床には餌を入れた小鉢が置いてあったらしい。その家は随分前に取り壊されたので、今でも道があるのかは不明だそうだ。