山でどんどん体が縮む奇妙な体験をした

杣人に聞いた話。通い慣れた山で何故か道に迷ってしまい徘徊していると、前方に小さな人影が見えた。おぉい!と声を掛けたが聞こえた様子はなく、人影はずんずんと先へ進んで行く。
付いて行けば知った道に出られるかもしれない、と考えて後を追った。

小一時間程歩いたが、風景は異様さを増してゆくばかりだった。尾根はぐんぐんと遠く、谷は恐ろしく深く、周囲には見た事も無い巨木が立ち並ぶ。ふと妙な考えが浮かんだ。
「体が縮んでいるのではないか?」
改めて頭上を見上げると、巨大な笹の葉が空を覆い隠すように揺れていた。ピリリリリリ!突然ポケットの携帯電話が鳴った。取り出す間もなく耳元で声がした。
「お前、そんなところで何やってんだ?!」
聞き間違えようの無い父の声。

次の瞬間、いつも通っている山道に立ち尽くしている自分に気が付いた。携帯の着信履歴には、昨年他界した父の家の電話番号が残されていた。


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