友人から聞いた話。田舎の祖父が若い頃、野草探しに入った山奥で、珍しい花を見つけたそうだ。とても綺麗だったので持ち帰ることにしたが、途中で何故か道に迷ってしまった。
いくら歩いても堂々巡りで山の祠の辺りに出てしまうので、くたびれた祖父は、祠の前で横になったそうだ。うとうとするうちに、祖父は奇妙な夢を見た。
夢の中で、祖父は一面の花畑を前にして立っていたそうだ。妙に見覚えのある地形に不審を抱いて目を凝らすうちに、祖父はここが自分の村だと気が付いた。人気のない家々の屋根を覆い尽してあの花が咲乱れていたのだ。
目を覚すと、祖父は大急ぎで道を引返して花を元の場所に戻してきた。今度は道に迷わなかったそうだ。