藪の中をヨタヨタと歩く全身ガーゼ巻きの異形に会った

自転車で山を走っていた。もうすぐ日が暮れそうで、低山なのですこし油断したと後悔していた。迫る夕闇と滑る急坂が焦らせ、だんだんと後悔と恐怖感が支配してゆく。頂上の広場についた頃には太陽は沈んでいたがまだ少し明るい。下りは15分もあれば帰れるはずだ。
「あとは下るだけか・・・」
もと来た道を下りはじめるとすこし先に人影が見えた。
「こんな時間にハイカーか?」
スピードを落とし、様子を伺うと何かおかしい。人影はハイキングコースをそれて薮の中をヨタヨタ歩いているのだ。不審に思い声をかけてみた。

「こんにちわー山菜採りですかー?」
向こうもこちらに気づいたらしくヨタヨタと近づいてくる。と、全身が泡立った!確実におかしいのである。まず頭から全身にかけてガーゼのような薄い布を巻いていて、いっさい腕を動かさないで歩いている。
「人じゃない・・・」
そう思って一目散に逃げようとペダルに足をかけた瞬間、耳元で
「こんにちわー山菜採りですかー?」
「こんにちわー山菜採りですかー?」
「こんにちわー山菜採りですかー?」
男とも女ともつかぬ声が聞こえ一目散に逃げた。

途中何度も転倒し血だらけになりながらなんとか家にたどりついた。次の日自転車をメンテしていると後ろのギアの間から大量の髪の毛がでてきた。

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