【姿なき】障害者施設で起きたある事件の翌日に…【訪問者】

昨年の8月末にあった、ちょっと不気味な体験を書いてみます。その頃、長年勤めた会社をやめたので、大学時代を過ごした懐かしい街に引っ越し、次の仕事も探さずに自堕落にノンビリと一人暮らしを楽しんでいました。引っ越したマンションの隣の建物は、用水路をはさんで障害者の人達のデイケアセンターのような施設。一階の自分の部屋からは、備え付けの薄いカーテン越しにお互いの部屋が丸見え状態だったんです。昼間から部屋でゴロゴロしているのを薄いカーテン越しに覗かれるのが嫌で、施設が稼働し始める8時頃に就寝して、施設が閉まる17時過ぎに起床することでお互いの活動時間をズラして関わり合わないようにしていました。

いつも通り夕方に起床して夕方のニュース番組を見ながら朝ごはんを食べていました。いつもはどんなに遅くても19時までには必ず施設の職員の方も退出するのですが、この日はその時間を過ぎても職員の方が帰らずに室内をあちこち動き回っている事に気付いたのです。施設は週末に不定期にバザーのようなことをもよおされていたので準備がおしてるのかなぐらいに考え、まあ、あまりジロジロと様子をうかがうのもなんなので、気にしないように自分はテレビを見ていました。

テレビに没頭していてふと気付くと、もう日付が変わろうかという時間なのに相変わらず施設の室内の電気は点いたままなのに人が動いている気配はありません。電気消し忘れて帰っちゃったのかなあ、と思いながらテレビから深夜ラジオに移行してその深夜ラジオが終わろうとするまさにその時間に、隣の施設の電気が消えたのです。「わっ、まだ中に人がいたんだ」とビックリましたが、その後に不思議な事が起こったんです。

その直後のAM3時を少し過ぎた頃、マンションの右隣りの中国人が住む部屋のインターホンが鳴ったんです。普段からその中国人の生活音に悩まされていたので、もし深夜に部屋で騒いだら文句を言いに行くつもりだったのですが、部屋からの反応はありません。(生活音丸聞こえで悪名高いLパレスに住んでます)中国人は月の内の数日間を留守にすることがあるので、たまたまその日だったようで深夜の訪問者も帰ったようです。ラジオを消して自分は読書をしていたので、再度自分が読んでいた本に集中しているとかすかに物音が聞こえてきました。

「ブーン…、ブーン…」
イスに腰かけたままで振り返ると、なんと室内の自分の部屋のインターホンがオンになっていて、カメラを通してドアの外が映し出されていました。自分は訪ねてくる知人もほぼいないためインターホンの音量はオフにして映像のみをオンにしているのです。呼び出し音は鳴らずにいつの間にか自分の部屋のインターホンが押されていたようなのです。それの電子音がかすかに鳴っていたのでした。

「こんな夜中になんで????」
固まったままインターホンの映像を見つめる自分。カメラには深夜のドアの外の景色が映るのみで、人影はいっさい見当たりません。そのまま10秒から15秒程の時間がたった頃でしょうか、ドアホンは変わらぬ外の景色のみを映して消えてしまいました。一階のため、部屋の窓を破って見知らぬ人が入ってくるのでは?とドキドキしたまま緊張していると…。
「ピンポーン…」
今度は左隣の部屋のインターホンが鳴ったのが薄い壁を通して聞こえてきました。そこで自分は全てを理解したのです。

なんだあ、Aさん(左隣の住人で少し交流のあるオジサンです)デ〇ヘル呼んだのかwデ〇ヘル嬢がマンション名はわかっていても部屋番号がわからなくて、適当にいくつかの部屋のインターホンを鳴らしたのでしょう。まじめそうなオジサンなのにAさんもやるなあ、なんて思いながら好奇心もあって左隣の住人に気付かれないようにゆっくりと玄関に向かってドアに耳を付けて、会話を盗み聞きしてやろうと自分は室内の玄関付近で待機していました。その後、左隣の部屋から備え付けのベッドがきしんで玄関に向かって足音が近づくのがわかりました。

ガチャガチャとドアノブが回ってドアの開く音が聞こえたのですが、Aさんの声も嬢の声も聞こえません。しばらくしてドアが閉まり鍵をかけた音だけが聞こえました。無言で部屋にまねき入れたのかと自分も部屋に戻って耳を澄ましていましたが、会話も何の音も聞こえてきません。ただAさんは目が覚めてしまったのか、室内備え付けのイスに腰かけたようで、イスの足を引きずる音やきしみ音だけが聞こえてきました。結局その後は何も聞こえず起こらず、外も少しずつ明るくなってきました。

その日の朝は週に一度の燃えないゴミを出す日だったので、8時頃に外にゴミ出しに行ったのです。ゴミ捨て場に行くとビックリ。パトカーが一台施設の駐車場に停まっていて、数人の近所の人が集まっていました。何か事件でもあったのかと行ってみると、どうやら施設の中で人が一人首を吊っているようなのです。ええ~っと思いながら中の様子をうかがっていると、Aさんもゴミ出しに出てきました。

Aさんに事情を説明した後、少し離れて一緒にタバコを吸い世間話になったので、思い切って昨夜のインターホンの件をAさんに振ってみました。
「夜中に誰か来ませんでした?」
「そうそう、夜中にインターホン鳴ったんだよ、でもカメラには誰も映ってなくてあわてて外に訪問者を見に行ったんだけど誰もいないんだよなあ。イタズラかと思って部屋に戻ってから呼び出し音オフにしたらまた、すぐにインターホンのカメラが点いたんだよ。でも外の景色のみで誰も映ってないんだよな。気持ち悪いし不気味だからその後一睡もせずに起きてたよ。」

結局Aさんの部屋のインターホンは合計3回も実態のない訪問者から押されたらしいです。外で話していた近所の人達の話では施設で首を吊っていたのは若い男性職員のようでした。昨晩、いつもの時間よりも遅くまで何かをしていたのは自分も見ています。その後何時間かまったく人の気配が消えていたと思っていたらいきなり電気が消えました。ひょっとしたらあのすぐ後に職員の方は首を吊ったのか…?

自分の部屋もふくめて両隣のインターホンが鳴らされたのはまたその少し後…。結局その後はいっさい自分にはおかしな事は起こっていません。(Aさんも普段通りのようです)今はもう再就職して違う街に住んでいるので、再度あのマンションでおかしな事があったのかはわかりません。ちなみにAさんいわく「オバケなんて絶対いないから」とのことです…

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