奈良の森林に忍び込んだら、鳥居があって中国民謡が聞こえてきた

鳥居に関するちょっとした体験談。俺の実家は奈良の田舎にあって、幼少の頃は遊びと言えば山を駆け回っていた。友達と探検したり、秘密基地を作ったりで本当の田舎の子って感じだった。

あれは小学校6年生の最後の春休み、俺は私立の中学行くので地元の皆とは会える機会が減るってことで、最後の探検と称して普段よりも山の奥深くまで冒険しに行くことになった。朝からリュックサック背負い、母ちゃんに作ってもらった弁当と長年使った剣みたいな木の棒持って。4人で隊列組んで。普段よく行く見慣れた場所を過ぎて、更に奥深くまで進んで行くと、竹薮から植林が多い森から雑木林へと変わり、2時間も歩くとあたりはかなり薄暗くなってきた。俺達ガキは怖いもの知らずだったので、もっともっと行けるまで進んで行こうとしてた。

3時間ほど歩いて、一番先頭を歩いていた奴が急に止まった。「もう疲れたんかい」と俺が訊くと「ちゃうねん、何か聞こえへん?歌みたいなん」と言う。俺達は耳をしまして、じっくりと聞いてみると、時たま聞こえる鳥の囀りの中に奇妙な歌声が見つけた。「ほんまや、何か聞こえるな!声のする方行ってみようや!」ってことになって、俺達はその声のする方向へと歩いて行った。 

再び歩き出して1時間、その歌声は徐々に大きくなって行き、歌詞も聞き取れるぐらいにまでなった。メロディは中国の民謡みたいな感じで、子供ながらに神秘的に感じた。
歌詞は「天から大きな簪(かんざし)降った、地から小さな俵(たわら)がはえた」ってフレーズだけ覚えてるが、他は忘れてしまった。その歌を聴いてると、かなり気持悪くなってきて、正直俺は引き返したかったが、それを言うと馬鹿にされるので更に声のほうへと進んで行った。すると、声が急に止み、また先頭の奴が立ち止まった。

「どないしたんや、はよ行けや」 
「おい、前見てみろよ・・・」
俺達が前方を見ると、小さな鳥居が立っていた。 
「こんな所に鳥居なんか在るんや、珍しいなぁ」

鳥居をくぐってみた。鳥居から5mほど離れて、本当に小さな祠があって、何年も手入れされてないんだろうか、めちゃくちゃになっていた。ちょうど朝から出発して、腹が極限まで減っていたので、俺達はそこで母ちゃんの作ってくれた弁当を食べることにした。俺ら4人が地べたに座って、腹が極限状態まで減っていたので、必死になって弁当食ってると、またさっきのあの歌声が聞こえた。今度はどこで歌っているのか分からず、山全体に響くような感じで聞こえ、その歌声は徐々に大きくなっていくのが分かった。今考えるとかなり怖いが、その時はその歌に聞き込んでいて、4人とも弁当食いながらぼぉ~っとしていた。 

弁当食い終わって、歌声の主も分からないので、更に奥に進もうかということになって、俺達が鳥居を再度出るために潜った瞬間、さっきの歌声が間近から聞こえ始めた。その歌声は祠から発せられていて、お爺さんが叫ぶように歌っているみたいに聞こえた。俺達は子供ながらにヤバイと感じたらしく、一斉に走って逃げようとすると、前20mぐらい先に真っ白な装束?(あの坊さんが着てるような奴)を着た人が3人こっちを向いて立ってた。これには俺達もマジでビビッて、全く逆方向に向って走って逃げた。後ろは振り向かずに、ひたすら走って逃げた、だいたい1時間以上逃げ続けて、立ち止まると、後方には誰もいなかった。 

俺達は怖くなってそのまま山を別ルートを探して下って行き、5時間かけて山から出ることができた。今でもその時の友人と会うと、例の歌声の話題で盛り上がる。その事件以後、その山には絶対に近づかないようにしてる。

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