自殺した社員が社内を普通に歩いている件

私は外資系の金融関係の某支店に勤務しています。人手が足りずどんどん社員を採用するもので1,2年に1回はオフィスが狭くなるので引っ越しをします。1年少し前まで東京の中心に位置し国道に面してある坂道のビルの2階フロアーにいました。隣はなんとお寺です。

道からは見えませんが2階からは近代的なお寺の建物と対照的なお墓が良く見えます。2階フロアーは間仕切りがなく手狭になるとすぐまた引越しなのでガラスのパーテーションで区切っています。当時私のとなりにAさんという温厚な人がいました。

ある日を境にその人は行方不明になり1週間後首をつって自殺体で発見されました。原因はサラ金です。それからというもの、この世にいないはずのAさんが社内でたびたび目撃されるということが起きていたそうです。自分の席で新聞を読んでいる、トイレから出てきた、会社にAさんから電話がくる、会社の前でAさんとすれ違うなど…それは頻繁に起こったようです。毎日10人前後の社員が深夜まで残業していることはザラでしたが、その件があってからは「気味が悪い」と、残業する社員が激減していたようです。Aさん目撃談については緘口令がひかれ誰も口にはだしませんでしたので、当時外出の多かった私はそんなことが起きているなど全く知らずに過ごしていました。そんな時、私と同僚Bさんに急ぎの案件が入り、徹夜でやらなければ間に合わない状況になりました。「今日は徹夜だ」と言うと皆妙に感心していました。あの時知っていれば、社内に残ることなんて選択しなかったのですが…。

深夜1時は過ぎていたと思います。机の向かいのBさんを見たときに肩越しに何かが見えました。よく見るとBさんのうしろのパーテーションの上にAさんの首だけが乗ってこちらを無表情に見ているのです。私は驚いて、思わずのけぞりました。つられて振り向いたBさんも驚きで椅子から崩れ落ち、床を這って私の机の方へ来ました。何秒か待って、一緒に机のかげから見ましたが、もうそこにはAさんはいませんでした。

二人共同じものを見た事を確認しました。Aさんは会社になんの未練を残したのでしょうか。未だにわかりません。数週間後支店は移転しました。

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