ちっちゃいころ、当たり前のごとく親に「知らない人についていくな」と言われていた。自分では年の割にはしっかりしてる方だと思ってたし、まあそんな誘拐されることなんて実際ないわな、なんて当時は思っていた。
そんな俺が小学生1年くらいの時。まだ自転車にのれない俺は毎日友達のところに行っては歩いて家まで帰っていた。すると、後ろのほうから背広っぽいのを着た(記憶では茶色で細身)おっさんが自転車にのりながらやってきて「家まですぐでしょ、後ろに乗ってく?」って声をかけてきたわけだ。もしかすると親の知り合いかもしれないと思ったが、やはりいかがわしさを覚えて「いえ、歩いて帰ります。」と断った。
その時はそれで終わったんだが、そのおっさんは一週間くらいして、また自転車に乗って俺に声をかけてきた。また俺は断った。そしてまた一週間くらいして声をかけてきた。また俺は断った。すべて断ったが、結局三回くらい声をかけられたのか?三回とも、自転車に乗っていたし、毎回同じ背広を来ていたことは覚えている。
さて、そんなある日近所の山中で自殺者が出た。茶色の背広、細身、など詳細を聞いてみると俺に声をかけてきたおっさんだった。あまり詳しくは聞かなかったが、少なくとも親の知り合いではなかったらしい。そもそも近隣の人だったかどうかも疑わしい。このおっさんは俺に嫌われたりさびしくて自殺したと当時は考えていたんだが、自殺する前に俺を誘拐するつもりだったと考えると、俺はいったいどうなっていたんだろうか?友人とかに聞いてみると俺以外は誰も誘拐されそうにならなかったらしい。なぜ俺だけに声をかけたのだろうか?今考えると、ついていかなくて本当によかったと思う・・・。