虎の剥製の記憶

不思議な話、なのかな?
既に故人だが、大叔父の自宅に虎の剥製があった。
ワシントン条約とか規制が厳しくなる前に趣味で知人から購入したもので、後から知ったが、スマトラトラという種類の虎らしい。
幼かった自分や親戚のこどもたちにとって、この虎にまたがるのは楽しい遊びのひとつで、父母らには叱られたが、こども好きな大叔父は勝手にまたがっていても大目に見てくれていた。




あるとき、いつものように虎の背に乗ったら、唐突に、本当に突然、 胸が締め付けられるような悲しい感情がこみ上げてきた。
当時、自分は小学校二年。
悲しみがどんな感情かなんてよくわからない年齢だし、そもそも理由もなくそんな気持ちを抱くはずもない。
釈然としないまま、それからはなんとなく虎に乗るのは避けるようになった。

中学生くらいになって、いとこにその話をしたら、
いとこもある日、虎に乗った直後、同じような感情が沸き起こったそうだ。
無理に例えれば、何か大切な存在と別れなければならない気持ち。
密林で追われ射止められる瞬間の虎の気持ちとシンクロしたっぽい。
知らない間に感情移入してそうなったのかもしれないけど。
生き物は、死んでも大事にしなきゃいけないんだなとは思うようになった。

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