祖父は昔、農家や林業をしていました。そのため山の異聞や怪異について書き留めるようになったようです。
日記や資料のうちの一つです。
【ばく】
祖父が奥山で林業をしている時です。
当時は泊まり込みで木を切るときもあり、山小屋に泊まって連日木を切ったそうです。
祖父の親方が、いったん山を下りて食料を確保して夕方上ってくると言い、下山しました。
せっせと木を切っていると、矢庭に「ばくがくるぞ!」と子供の甲高い声が響き渡りました。
祖父がびっくりして周りを確かめても、子供処か人っ子1人いなかったそうです。
しかし間髪入れずにまた「ばくがくるぞ!ばくがくるぞ!にしゃあはようにげろい!」と大声で子供の声で叫ばれ、祖父は魔除けの鉈を取り出し小屋の中に逃げ込みました。
すると、山小屋が揺れるような突風が森の中を吹き抜けていきました。
しばらくして、警戒しながら山小屋から出て周りの状況を確認してみたそうです。
すると、上半身のない猿の死体、足しか残っていない山鳥、生首状態の鹿の死体が見つかりました。
御守りと鉈を肌身離さず仕事をしているうちに親方が帰ってきて、その事を話したそうです。
すると「それは『ばく』とか『ひとのみ』とか呼ばれている化け物だ」と教えてくれたそうです。
その化け物は猿の脳みそが一番の好物で、上半身もろともかじり取ってしまうそうです。
他にも鳥は足だけ残し、鹿は首から上は絶対に食べていかないそうです。
人が襲われることはあまりないそうですが、たまに襲われることがあり、指や耳など比較的柔らかいところを食われるそうです。
この化け物はその山以外でもよく出現するそうですが、祖父が化け物に遭遇した山は昔から霊山として有名で、ばくが出現すると、子供の声で「逃げろ」とか「ばくがくる」とか警告をする声が聞こえるそうです。
その声について祖父が親方に聞くと、「あれはこの山に住む山つ神様の声で、俺たちが安全に仕事ができるように守ってくれてるんだ」と言ったそうです。
そして、「ただし、山には入る前に、入り口の祠に供え物してからじゃねえとあまり守ってくれない」と付け加えられたそうです。
確かに祖父は山には入る前に、親方と必ず祠に供物を捧げてお参りしてから入山していたそうです。
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『にしゃあ』=お前は(お前=ぬし。なまって『にし』になる)
母の実家(南会津)の方言と一緒。…あの辺りにいるんですか??((((;゚Д゚))))ガクガクブルブル
大分昔の話ですが、伯父は一年の内数日を山の炭焼き小屋で過ごして、炭を作っていたと聞いています。
伯父から怪異の話は聞いた事は無かったですが、怪異自体は身近にあったように思います。
夜になってアナグマ等が畑の農作物を食べてしまう時に、畑に出て追い払わないのか?と聞いたところ
「あれはマミーだから、放っておけ。外に出るな」と言われました。
マミーってなに?と聞いたら、アナグマだけど一種の魔物だというニュアンスの答えでした。
漢字で書いたら『魔魅』になるのでしょうか…?