古い神社の屋台

知り合いの話。

部活で夜遅くなった帰り道、横手の小山に光が見えた。
暗い斜面の中腹がほんのりと明るくなっている。
上には古い神社があるが、そこは神主も常駐しておらず寂れていた筈だ。
「何か行事でもやっているのかな?」
好奇心を刺激されて、苔生した石段を登ってみた。




狭い境内の中にぎっしりと夜店屋台が列を成して並んでいた。
『綿菓子』や『イカ焼き』などと書かれた幟が見受けられる。
提灯が軒という軒に吊されて、黄色い光を発していた。
下から見えた光源はこれだったらしい。
不思議なことに、人の姿は何処にも確認出来なかった。
シンと静まり返った中で、金魚すくいのポンプだけがコポコポという小さな音を響かせている。
夜店の列の間を境内の中央まで進んでみたが、人の姿はなかった。
「誰か居ませんか?」と呼ばわっても、何の返事もない。
どうにも気味が悪くなって、そこで引き返したのだという。
最後に石段の下から見上げてみたが、黄色い明かりには変化がなかった。

翌日、日が高くなってから神社を再訪してみた。
地面にはふかふかと落ち葉が積もり、店を建てたような痕跡などない。
人に話してみてが、「夢でも見たんだろ」と相手にされなかったそうだ。

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