子供の頃、家族と山にハイキングに出掛けた。
で、張り切って先に先にと行ってるうちはぐれてしまった。
誰も居なくて泣きながら歩いていたら、畑仕事みたいな格好をしたオッチャンが笑顔で歩いてきた。
「迷ったんか、ここはちょっとぐねってるもんなあ」って言葉だけはっきり覚えてる。
俺はその瞬間からそのオッチャンが怖くて怖くて、心臓がバクバクしていた事しか記憶にない。
オッチャンの顔からはミミズのような触手が何本も生えていて、ウニョウニョと蠢いていたんだ。
オッチャンは笑顔のまま、俺の横にしゃがんで前の小道を指差し、ほら、あそこの道を行ったら出られるぞ。というような感じの事を言った。
俺は今すぐ走り出したい気持ちを抑えて、親切にしてくれたオッチャンにペコリとお辞儀した。
頭を上げたら、オッチャンはやっぱり笑顔のまま、うんうん、という感じで頷いていた。
オッチャンの目からは触手が何本も突き出していた。
あとはもう、教えて貰った道を振り向かずにひたすら走った。
父を見つけた時の安堵感は忘れられない。
その後、あのオッチャンの事は家族には話さず、俺はただずっと父と母に謝っていた。
オッチャンがとても親切だった分、あの顔から出ていた触手が余計に印象に残ってしまって、未だにたまに夢に出て来る。
その夢の中でのオッチャンは、笑っていないんだ・・・。
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何かがとっさに人型になって、なりきれなかったのかな
悪い人じゃないよ、きっと