大分県離島の怪異

ひいじいさんが体験した、昭和初期の話。

ある夜、じいさんが村の寄り合いが終わり、家へ帰宅していた。
山道を下り帰宅するのだが、途中小さな寺がある。
かねてよりその寺の周辺には、『物の怪』が出るとの噂があったのだが、
じいさんは漁師で腕力に自信があったコトもあり、平気で暗闇の中ランプ片手に歩いてたらしい。

やがて寺の石垣が見えてきた頃、ふと見ると、目の前を小さな子供がチョコチョコと歩いている・・・
じいさんは「おい、お前は何処の子かァ?」と呼びかけてみたが、その子は目の前にいない。
ハっと見やると、じいさんのわずか後ろをチョコチョコとその子が歩いてる。
「妙な子やのう・・・」と、その子をよく見ようとしたところ、後ろにはもういない。
首をかしげて歩みだそうとすると、またその子が前方をチョコチョコと歩いてる。
「コラ、お前」と追っかけて追いつこうとすると、
またその子は、いつの間にか後ろをチョコチョコと歩いている。

驚くことにじいさんとその子は、
前に行ったり、後ろを行ったり、50メーターくらいを先になったり、後になったりしたらしい。
やがて、村の灯りが見える頃、フッとその子は消えてしまったそうだ。

じいさんは下戸で酒も飲めなかった為に、その話は妙に説得力を持って、村の人たちに広まったそうだ。
じいさんは、「あれが寺に出るモノやったんじゃろうなぁ・・・・」と言ってたらしい。
その島では“せこの子”とか言うらしく、河童のようなものと噂されてたとのこと。

小さな大分県の島でのお話です。




もう一つ、ばあさんが体験した話いきます。
これは戦時中の話で、やはり大分県の同じ島での話です。

当時、終わりの見えない戦争のさなか、食べ物が不足していたその島では、山で芋などを作っていた。
祖母は友人とその日も山へ出かけていった。
その山の登り道はクネクネと曲がりくねった道で、
例えるなら、螺旋階段が大きく広がったようなもの・・・(と書くと、わかってもらえるでしょうか)

山道を話しながら登ってると、2段ほど上の道を何かが歩いてる。
茶色の髪をした子が、ばあさん達と同じ調子で歩いてる。
しかし、顔は山の草木でよく見えず、下から見ると頭だけが見える状態だったらしい。
友人が「変わった子がおるもんやなぁ。アンタあの子が見えるやろ?」と訊いてきたために、
「はあ、見えるで。あんな髪のいろしてなぁ・・・」と、ばあさんも相槌を打つ。

「こんな暑い日に、あの子は帽子もかぶらんでなぁ」
「何処の子じゃろ?」
などと話しつつ登る。

やがて「見にいこうや」となり、その子に追いつこうとするが、
足を速めればその子も足を速めて、どうしても追い付けない。
頂上は平野のようになってるため、「まあ頂上に行けば会えるやろう」という事で頂にたどり着くも、
その子は影も形も無かったそうだ。

当時、カンカン照りで暑い日には、その島ではそういった不思議なものが村人に目撃されたそうです。

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