寝言の怪異

高校時代、よく友達の家に仲のいい友人三人で泊まってたのね、土曜の夜とか。友人の六畳間に三人で雑魚寝するんだけど、いきなりおれの右側で寝てた友人が寝言を言い出したわけ。「潜水艦が……」って。あんまり唐突だったんで驚いたんだけど、そのときは『怖い』よりも『面白い』が先だった。

結局友人はその夜三回「潜水艦が……」を連発!あんまり面白かったんで、翌朝おきてからさんざんそのネタで友人をからかった。本人は潜水艦の夢なんてまるっきり見た記憶がないという。

その次の週の土曜日。またその友人の家に泊まりにいった。友人のひとりは早々に眠ってしまい、深夜、例の寝言の友人とふたり、ずーっと話をしてたのね。そしたらふいにそいつが黙り込むの。「なんだよ」って聞いてもずーっと黙ってる。それからぼそっと、
「なぁ、T……」
「なんだよ」
「あのなぁ、おれと今夜いっぱい話しただろ」
「うん」
「これがぜんぶ寝言だったらどうする」
そのときの友人の抑揚のない、感情のかけらも感じさせない淡々とした声。思わずぞーっとしてしまい、それっきり一言もかわさず、布団をかぶって寝てしまいました。

翌朝……さすがに怖くて聞けなかったです。『ゆうべの寝言覚えてる?』とは。

メールアドレスが公開されることはありません。