その当時、母親が過労で倒れて入院。付き添いは私と父親が交代でしていた。2週間ぐらいかなぁ、入院期間。その頃になると母親も体力・気力を取り戻し医者にも「あと2、3日様子をみて異常がなければ退院できますよ」と言われた時には、心底ホッとしたもんだ。ま、そんな話はさて置いて。
病室には一応、付き添いの人の為の簡易ベッドがあるんだが、いかんせん消灯9時生活はキツイ。なので、よくロビーの喫煙所で漫画読んだりしてた。ロビーは一階、母が寝てる病室は二階。二階は東練と西練に別れてた。母親の居るのが東。西は、長期の入院生活を送ってる子供が大半だったと記憶している。
夜とか結構泣いてる子供が多いんだ。やっぱ、長いこと家に帰れないつーのは大人でも辛いものがある。しかたないよな、と思うけどやはりここは病院、あんまりにも煩く泣いてると看護婦さんがたしなめに行く。「がんばろうねぇ、もう少ししたらおうちに帰れるから、泣かないで」
その日も、夜中に子供が泣いていた。凄い勢いで、てな感じじゃなくてシクシクシクシク…本当に哀しそうに泣いてた。ところでさ、病院に限らずあーゆう建物って割と音が反響するもんだが、その泣き声の主がすぐ傍にいるような、はっきりクリアに聞こえたんだよ。いつまでたっても泣き止まない。不思議と看護婦のたしなめる声も聞こえない。おかしいなぁ、などと思ってたら「靴が無い」「おかぁさん靴がないよ」シクシクシク…「足が痛い」「おかぁさん、足が無いよ…靴、はけないよ」あー、足がないのか可哀相にな。そん時はそう思ったんだけど。
次の日その事を看護婦に話したら「いやぁだ。そんな子はいないわよ」と、まぁお決まりの答えが。そんな事だろうと思ったよ。