中学生の時です。
相模湖畔にキャンプへ行った私達は、深夜に女子のテントへ行こうと、自分たちのテントを抜け出しました。運悪く、先生の見回りにぶつかってしまい、私達は一目散に逃げました。逃げた先は、ちょっとした休憩所の様になっており、私達はそこで煙草を吸っていました。
「やべえ!!誰か来た!!」
とっさに脇の茂みに隠れると、赤ん坊を抱いた女性でした。
「誰だ?あれ」
私達がひそひそ話していると、女性が急に騒ぎ始めました。
「赤ちゃんを返せ!!」
「どこへ隠した!!」
髪を振り乱し、騒いでいます。私達は気の触れた人だと思い、怖くて息を潜めました。
やがて、女性が私達の潜む茂みの方へゆっくりと歩き始めました。外灯の下で、こちらをにらんでいます。私達は泣きそうでした。やがて、女性が口を開きました。
「私の…赤ちゃんがあ!!」
抱いていた赤ちゃんをこちらに向けると、外灯に照らし出されたそれは明らかに死体、それも白骨化が進んでいました。
「うぎゃあ!!」
私達は茂みを飛び出し、一目散に逃げました。
「こらあ!!」
見回りの先生がいました。
「先生!!」
私達の異常な様子に気づいたのか、私達の手を取り、一緒に走り出したのです。やがて、管理事務所にはいると、先生は慌てて鍵をかけ、電気をつけました。
「お前達…何があった…?」
私達は見たままのことを話しました。
先生が、真っ青な顔で、震えています。
「先生?」
「追っかけてきてた?」
先生が静かに言いました。
「…俺には、女の人は見えなかった。でも、お前達の後ろから、二つの人魂が追っかけてきてた…」