知り合いの話。
彼のお爺さんは猟師をしていたそうだが、その山には奇妙な獣がいるのだという。
それは、丸々と太った地ネズミの姿をしていたらしい。
猟をしていると、山道の行く手にふらりと姿を現すそうだ。
近づくとネズミの身体はボコボコと膨張し始め、倍くらいも膨れ上がる。
そして甲高い悲鳴とともに破裂して、臓物をあたり一面に撒き散らすという。
出くわしてしまうと、獲物が取れなくなる上に、大怪我をすると言われていた。
そのため、しばらくは家にこもって、物忌みをするのだそうだ。
「獲物を獲り過ぎないようにという、山の神様の報せかもしれんな」
猟師たちはそう言って、素直に従っていたそうだ。