血生臭い軍服

私が小学生の時の話です。母と、某都内公園のフリーマーケットに行きました。私は、女の人が売っていた軍服に興味を持ちました。カーキ色で赤の星がワンポイントの可愛い軍服。一目惚れして、ねだって買ってもらいました。

家に帰って来てみると、中々ジャストサイズですっかりお気に入りになりました。その時、妙な匂いがしたんです。何か血なまぐさい様な。まさかな、と思って軍服を嗅いでみるとやっぱり軍服の匂い。まぁ、フリーマーケットで買ったから仕方ないかとその時はあまり気にしませんでした。そこで、おかしいと気付けば良かったのに。

そしてすっかりお気に入りになったわりには、一回も着ないで私は中学に上がりました。中2になって初めての中間テストの時。私は夜中までストーブに当たりながら勉強をしてました。すると、窓の方からぼそぼそと話し声がするのです。ん?と思って、耳を澄ませて聞いてみました。

「○○、○○」
私の名前を呼んでいます。最初は友達が来たのかと、窓を開けて確認しました。でも、外には誰もいない。気のせいかと思ってまた勉強し始めると。
「○○、○○」
その声は明らかにおかしかったんです。低い声の男性が機械音声みたいな声になってる感じで。その時、直感で生きている人じゃないと思いました。恐くなって、泣きながら母に報告したんですがもちろん信じてくれる筈がない。その日は恐くて恐くて寝れませんでした。

しかし、自分が忘れっぽいのもあって1、2週間経つとすっかり忘れていました。そして完璧に忘れた、その1年後。中3になって、またテスト勉強をしてる時。やけに眠気が襲ってきました。まだ夜の10時くらいだったはずです。眠気には勝てずに、何時の間にかベットに横になっていました。

ふと、目が覚めたのです。今でも覚えてます。真夜中の3時。枕元に、誰か居ます。暗やみに目が慣れてきて、金縛りにでもあった様に体が動きませんでした。見たくないと思いながらも閉じようとしない目蓋。あの軍服を着てる、猟銃みたいなのを持ってる軍人さんでした。その顔はまさに鬼。物凄い形相で私を睨みつけていました。しかも、何やら声は出さずに口だけを動かしていました。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す」

ハッ、と気が付くと朝でした。顔は涙が乾いてがびがび。夢ではありません。絶対に。あの軍人さんは私を本気で殺す気でした。高校生になった今でも、軍服は処分できずにいます。

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