不幸体質の友人

高校生の頃、やたらと不幸体質なAという同級生が居た。と言っても不幸な目にばかり遭うというものではなく、「幸福を得ると目に見えて不幸にも遭う」というもの。

幸福の出所は運でも実力でも同様で、
試験で良い点を取る→指を骨折
部活でレギュラー入り→食中毒
福引で空気清浄機ゲット→ゲーム機故障
こんな感じで一事が万事不幸が付いて回る。それでも本人は明るく快活で「素直に喜べない」なんてふうも無く、前向きな奴だった。

社会人になって2年後、Aと、同じく同級生だった女子から連名で葉書が来た。おっ、と思って早速読んだら、やはり披露宴の招待状。2人の写真がプリントされてるんだが、Aは見るからに生傷だらけ。そんな美少女娶るからだ、と、郵便受けにはもう一枚、「Aの家から」葉書が来ていた。「真に恐れ入りますが、Aは事故に遭い亡くなりました。招待状のお返事は結構です。」その葉書にかなり違和感を感じたものの、数人の同級生と連絡を取って、Aの家にお焼香だけでもさせて貰いに行くか、という運びになった。

当日、訪ねてみると葬儀は身内だけで済ませたとの事。仏壇には遺影も無く、白木位牌だけが置かれていた。
「態々ありがとうございます、あの子も喜んでると思います」
そういえば彼の体質の影響は家族にも及んでいたんだろうか。母親とAの弟妹の顔には当然疲れが見えたが寧ろすっきりとした、晴れ晴れとした様子さえ見てとれる。それはもう晴れ晴れとした……

帰り際、玄関を出ると友人の一人が呟いた。
「…なあ、Aがこと有る毎に痛い目見てたのって、あのかz・・」
「黙れよウルセェな」
もう一人が遮った。

誰からともなく足早に自分たちの車に向かう。後ろから「バキィッ メリッ」と木の板が割れるような音がしたが、振り返らずその場を去った。Aは自分に起こる不幸の経緯を誰にも話さなかった。なら俺たちが今詮索しないのも当然だ、と自分に言い訳した。

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