九州にあるH港って港に、中学のときの美術の授業のスケッチで行った。
友達と自分は二人で、停まっていた船の絵を描いていた。
ふと目の前の海を見たときに、不自然に海の色が黒いところがあった。
「あれ何?」
自分が友達に話し掛けると、友達は突然立ち上がってそこに石を投げつけた。
黒い所はゆっくりとこちらに近づいてきた。意外にでかかった。
「鮫?鮫っぽいね」
そのときは自分も友人も、なんで鮫がいるんだろう、くらいにしか思ってなかった。
しかし黒い所がこちらに近づくにつれ、段々恐くなってきた。
そのときは単純に、鮫に殺されることの恐怖しかなかった。
自分達は、とりあえず先生を呼んだ方がいいかと思い、立ち上がった。
すると、黒い所がバシャッと跳ねて、生臭い臭い(汚い犬みたいな)がしてきた。
あまりに強烈だっため、自分も友達もびっくりして黒い所を見つめた。
ゆっくりとそこから、黒緑色のワニみたいな顔が出てきた。
目は白く濁っていたが、小さな黒目は確認できた。
自分は目の前にいる物が鮫じゃなかったことに戸惑い、さらに得体の知れない動物がいることに、
激しく恐怖に陥った。正直チビったかもしれない。
その謎の動物はワニのような顔で、頭に枝(角?)が数本刺さっていて、異様な臭気を発していた。
三十秒ほど固まっていた自分は、まさかこいつが竜じゃないか、と思いはじめた。
黒い影みたいな部分はかなりでかかったけど、けっこう曖昧。鯨とかがあのくらいなのかなあ?
出てきたワニみたいな頭は、人の頭の二倍くらい。
けっこう近距離で見たから、これは間違いないと思う。
しばらくすると、その得体の知れない竜みたいなやつは、ゆっくりと海の中に消えていった。
当時この話は、誰に言っても信じてもらえなかったんだが、
そのことがあった年に、
石を投げた友達の祖母が一人(めちゃめちゃ元気だったのに)、自分の祖父が二人とも亡くなって、
ちらほら信じてくれるやつも出てきた。
自分にとっては極限まで恐かった話。
本当に竜だったのか何だったのかはわからないけど、今も恐くてあの港には二度と行けそうにない。
っていうか、あれ以来一度も海に行ってない。
誘われても体調が悪いって断ってる。(竜が恐いとは言えないし)
次会ったら殺されそうで…