先週から奥羽山脈の駒ケ岳~八幡平を三人パーティで縦走してきた。まだまだ雪も多く残り、素晴らしい行程だったのだが、途中俺が雪庇を踏み抜いて雪の中を相当滑落した。止まるまで地面がずっと雪だったのと、最後にぶち当たったのも雪の塊だったのと、俺は昔甲斐駒ケ岳で滑落して酷い目に遭っているので脊髄パッドやプロテクターの入ったバイク用の薄手のジャケットを中に着込んでいたので、幸いにもちょっとした擦り傷と打撲で済んだ。
仲間と離れてしまったのでとりあえず一人で森の中を抜けようと沢沿いを歩き出したら対岸から「大丈夫ですか?」といきなり声を掛けられた。ビックリしてそちらを見ると、青いジャケットの上に毛皮羽織った男と白い着物を着た女が居た。男はともかく、女の格好にポカーン(゜д゜)として見ていると、もう一度「大丈夫ですか?」と聞かれたので、「ああ、大丈夫です。見てましたか?」と返事をした。
「ええ、貴方が滑り落ちてくるのを女房が見つけましてね、この辺に滑りつくんじゃないかと思って来たのですが…大丈夫のようですね。大したものだ」「ええ、ありがとうございます。貴方たちも縦走ですか?」「いや、俺たちは魚を獲りに来ただけです。それじゃあ」 と二人は沢を上って行ってしまった。
その後、なんとか連れと合流し、奇妙な夫婦に会った話をしたら
「それってサンカじゃないのか?」
「サンカって?」
「奥山の中に住んでいる人々さ。通常は俗世間とは接触しないっていう」
「そんなの伝説か与太話だろう。だって普通の人間だった・・・ぜ?」
と言いかけて思い出した。男はベテラン登山家風だったが、着物着た女がなんでこんな深山に?その夜は仲間と山の怪談話や伝説を語りながら更けていった。
今考えると雪塊に突っ込んで頭打って、そんなモノが見えたのではないかと思うが、実に不思議な体験だった。また、秋口に行ってみるかな。