【怨念】年に一度の遊泳禁止日

その町にはきれいな海水浴場があり、夏休みになれば海水浴客で賑わっていました。しかし、1年のうちで1日だけ、誰もがその海に近づこうとしない日がありました。




その日の数十年前、臨海学校でその海水浴場を訪れていた小学校の一団がいました。そして、一人の生徒が溺れ死んでしまったのです。彼は、海水浴場近くの洞窟の中で発見されました。

その洞窟は、干潮時には歩いて入ることができる洞窟なのですが、満潮時には洞窟内いっぱいまで水が浸入してしまうのです。彼は泳げなかったので、洞窟内に迫る水から逃げるように洞窟の奥まで逃げ込み、そして洞窟内に入り込んだ水のせいで溺れ死んでしまったのです。

そして驚くことに、彼が死体で発見されるまで誰も彼の存在に気づいていなかったのです。点呼などは行っているはずですし、教師はおろか、生徒たちも誰も彼の不在を疑いませんでした。

その理由は、彼が苛められていたことにあります。点呼などの際にはいじめっ子たちが代返を行い、部屋で同室になっていたいじめっ子グループのせいで誰も彼の不在を訴えなかったのです。

彼はいじめっ子グループに洞窟まで連れてこられ、気絶させて洞窟に置き去りにしたのです。警察の捜査でそのことが判明しましたが、いじめっ子たちは何の罪にも問われませんでした。

それからです。毎年、彼が死んだ日になるとその日の海水浴客の中に死者が出るのです。死因は溺死ですが、死んでいる場所はまちまちでした。共通していたのは溺死以外にも、「誰もその人物が死んでいることに、その日は気づかない」ことです。
翌日になると一緒に行動していた人たちが一斉にその人物の不在に気づき、探し出した頃には既にその人物は溺れ死んでいたのです。

中には宿で深夜遅くまで起きていて、日付が変わった途端に同行者の不在に気づいて捜索を行った者もいました。その時も、不在の人物は溺れ死んでいました。

死因が溺死であること、誰も翌日まで気がつかなかったことから、当時溺死した生徒の怨念が人々を呪い殺しているのだと、当時の事件を知る住人によって話が広がり、彼が亡くなった日には海水浴場に近づかなくなったそうです。

それを知らない、市外からの海水浴客の被害がやまないことで、正式にその日は遊泳禁止になってしまったそうです。

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