2008年、東京都調布市国領の飲み会で聞いた話。
その時、私は国領である飲み会に参加する機会があった。一次会が終わり二次会に参加した際に、少し不思議な話を聞いたことを留めて書く。
ある人物Aが、仕事で遅くなり、京王線の終電ギリギリで帰ってきたのだという。 その日は夕方から雨で、宵の口からさらに雨脚が強くなり、深夜にはちょっとした強い雨になっていたらしい。
Aは折り畳み傘を取り出そうとしたが、その日に限って自室に忘れてきたのを思い出した。 やれやれと思いながら改札を抜け、階段を降りる。 彼はそこで一本の放棄されたビニール傘を見つけた。
透明であるはずのビニールは色がくすみ、傍目にもわりと年季が入っていることが伺えた。 元の持ち主は、古くなったのが原因で捨てたのだろう。
渡りに船とばかり、ありがたくその傘を使わせてもらおうとした。 ビニール傘を手にしようと思った瞬間、―――バッ、と傘が開いた。
誰が手にしたわけでもない。 唖然とするAを前に、ビニール傘はクルクルと二、三度回った後、フラフラ深夜の街に消えていった。
東京のような画一化された都市部でも、まだ妖怪は生きている。 この話を聞いて、なんか嬉しくなった。