体を貫通した黒い影の腕

私が育った地域は、最近政令指定都市になったばかりの、街中とはいえまったりとした場所です。ちなみに祖母・父・母・兄・私・妹の6人家族の中でいわゆる「霊感」とか言われるものを感じるのは母と私だけです。




私が小学校6年生の夏休みの話です。近所の神社で、小学生を集め夏休みの宿題を近くの大学生が見てくれるという企画がありました。勉強嫌いの私と妹も強制的に参加させられ2週間、毎日神社に行くこととなりました。

その企画は勉強だけではなく、最後の日の夜ちょっとしたパーティと恒例の肝試しが計画されており、私と妹はそれを楽しみに嫌な勉強を毎日していました。

そしてその日の夜、小学生の中では最年長の私達6年生が巫女さんの服装で舞を舞ったりし、低学年の子と話したりしながら時間が過ぎていきました。

楽しみにしていた肝試し。コースは、神社の裏にある小さな山を上って、上の境内まで行ったらユーターンしてくるという簡単なものです。その山自体幼稚園生でも上れる階段なので所要時間も15分ぐらいのものでした。私も小さい時から上りなれた山なので「簡単簡単」と高をくくっていましたが…

上り始めて5分ぐらいでしょうか、そろそろ境内が見えるころ。山から下りてくる人影が木の間から見えました。その為横一列に並んでいた私達はその人が通れる様に道を空けました。しかしその人が降りてくる様子がありません。

道は一本道。他の道はありません。ジグザグになっている道のため、ショートカットしようとしても必ず私達のところに来るはずです。不思議に思いましたが、そこは見間違いということで前に進みました。それからすぐ、多分2分ぐらい過ぎたときでしょうか。

「・・・・・・・・・・」

何か音というか声みたいなものが聞こえてきました。女の子だけのチームだった為、「確かめに行く」とか、そういう人はいなかったので「何も聞こえない、何も聞こえない」と皆で言いあって進みます。

境内につき、証拠のハンコをみんなの手に押し後を振り返ると……

「!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

全員で声にならない声で叫びました。そこにいたのは、「影」人の形をした「影」がいたんです。その影は私達の叫び声を聞いてもまったく動じなく、ただそこにじっとたたずんでいます。その内、我慢できなくなった友達の一人が、その影の脇を叫びながら駆け抜けていきます。置いてかれては!と私達も我先にと走り出しました。その瞬間、「影」はスッと私のほうに手を伸ばしてくるじゃないですか。半分狂ったように叫びました。何で私なの?とその瞬間私のおなかの真ん中からちょっと上ぐらいそこを「通った」んです。触ったとかえぐられたとかじゃなく「通った」という表現が一番いい感じです。

そして、そのまま「影」は境内の中に消えていったんです。

その時は「殺される!」とか「死んじゃうかも!」とかよりも、「皆に置いてかれる!」っていう恐怖の方が大きくてよくわからなかったんですが今思うと、何で影は私のおなかに手を入れたのか、何で私なのかすごく不思議です。

ちなみに、私達のグループが遅いといって探しにきた大学生のお兄さんに皆で泣きついて、お気に入りといっていたトレーナーをぐちゃぐちゃにしてしまいました。ゴメンナサイ。また今年もあの神社では肝試しをすることになっていると思います。

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